【生方】クランクインした最初の数日は撮影現場に行って、セットの雰囲気や、役者さんが演技しているのを実際に見せてもらってイメージを膨らませました。ただ、それによって具体的に何かキャラクターや関係性が変わったというわけではないですね。
視聴者のみなさんの反響はもちろん気になりますし、最初は「#silent」で検索をしていたんですが、自分が書きたいと決めたものを最後までブレずに書き切りたかったので、途中から「脱稿するまでエゴサはしない」と決めて、影響を受けないようにしていました。
――役者の演技や、映像の演出で、自分が意図していた以上のシーンになったなと感動したところはありますか?
【生方】ベタなところですが、やはり1話のラストシーン(想が久しぶりに再会した紬に手話で思いをまくし立てる場面)ですね。脚本上では想の母・律子(篠原涼子)や、戸川湊斗(鈴鹿央士)をカットバック(複数のシーンを交互に入れ込むこと)させていました。そうしないと長くて間伸びしてしまうかなと思っていたんです。
ところが、実際に編集してみたらここの2人の流れは一気に見せたほうがいいということになったようで。お芝居を見ると確かに納得で、映像的には緊張が途切れないように続けたほうがいいんだな、と勉強になりましたね。
悪役が登場しないワケ
――他にも『silent』を書く上で、生方さんが密かにこだわっていたポイントがあれば教えてください。
【生方】根が悪いやつは登場させない、ということですね。悪役がいると物語を動かしやすくて便利なのですが、このドラマでは“いい人たちが集まっていても歪みは生じる”というリアルを描きたかったんです。
メインキャラはみんな優しくて他人思いで、自分の言動を悔やんで省みる人たちですが、そんないい人でも人間関係のことになるとちょっと間違えてしまうのが人間味です。見ていてその“間違い”にモヤモヤした方もいると思いますが、そのモヤモヤこそが人間関係のリアルだと思っていただきたいです。