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世界を広げた「邑子ちゃん、学校のないときは受付やるか」

――高校生になってからも通院は?

後藤 続いてました。ちょうどその頃、M先生が大学病院の近くに血液検査専門の診療所を開いて、血液検査や薬をもらうだけだったら、そこでも大丈夫でした。

 その頃は先生とも仲良くなっていて、学校帰りに診療所によく遊びに行っていたら、「邑子ちゃん、学校のないときは受付やるか」って言われて、そこでアルバイトするようになりました。

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――ずいぶん活動的になりましたね。

後藤 その診療所、歓楽街のど真ん中にあったんです。だから、ソープランドで働く女性たちがよく性病の検査に来てました。お互い患者として会っているうちに仲良くなって、私は彼女たちと話すのが好きだったので、そこでアルバイトするのは好都合でした。

 当時、私は明るく振る舞っていても、やっぱり病気は辛くて、「なんで私だけこんな体なんだ」って、しょっちゅう怒ってたんです。親に話したら親を傷つけるし、同級生に話したって困らせるだけ。

 だからと言って、同じような闘病をしてる人たちに話すと、私より重症の人まで親身になって慰めてくれたりするんです。前から思ってたけど、なんで難病の患者さんたちって、あんなに優しい良い人なんだろう。私は一向にそうなれない。その人たちに、怒りにまかせて愚痴って慰められれば慰められるほど、自分だけダメな甘ったれに思えてくるんです。

 そんなとき、ソープランドのお姉さんたちは私と同じくらい口汚く病気に怒ってくれる(笑)。シビアな病状の人もいて、一緒に地底から地上に唾して叫んでる感じ。でもそこで私、初めて気が楽になるんです。救われてましたね。

 お姉さんたちの源氏名ってすぐ変わるし、もうとっくに引退してるだろうけど、イブさん、あかりさん、ありがとう。私は元気です。

撮影=橋本篤/文藝春秋

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