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「『子どもの貧困』を放置すれば社会的損失は40兆円に…」貧困虐待家庭で育った私が“生活保護バッシング”に思うこと

ノンフィクションライター・ヒオカさんインタビュー #2

2023/02/04

genre : ライフ, 社会

 地方の貧困家庭で育った、ノンフィクションライターのヒオカさん(27)。さらに、幼い頃から父親の暴力を受けて生活を送ってきた。

 2022年9月には自身の壮絶な人生を綴った著書『死にそうだけど生きてます』(CCCメディアハウス)を上梓し、反響を呼んでいる。そんなヒオカさんに、長年貧困問題を取材し、自身も貧困・虐待家庭で育った吉川ばんび氏が話を聞いた。(全2回の2回目/1回目から続く)

ノンフィクションライターのヒオカさん ©釜谷洋史/文藝春秋

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上司からのパワハラが原因で会社を退職

――幼少期に受けていた虐待の影響は、就職してからも続いたのですか?

ヒオカさん(以下、ヒオカ) 目の前で母が殴られたり父が怒鳴ったりするのが日常だったので、大人になってからも男性の怒鳴り声が本当にダメで。

 入社したての頃、直属の上司が2人いて、両方男性だったんです。指導役の上司はわかりやすい「パワハラ」タイプで、わざわざみんなの前で怒鳴ったりするんですよ。すると私、心臓がバクバクして、体が硬直して動けなくなってしまって。

 記憶力が良いほうなので、幼少期の頃からの出来事はほとんど覚えているんですけど、当時の記憶だけはところどころないんです。

――ストレスに対する、防衛本能みたいなものなのかもしれないですね。

ヒオカ もう1人の上司は、私に対してかなり執着するタイプの人で、後輩への愛情ゆえに少しストーカーっぽくなってしまって。

突然休憩室で立ち上がれなくなり…

――どんなことをされたんですか?

ヒオカ 最初は優しかったんですけど、だんだん私の行動を制限するようになって。「体調不良で休みます」と会社に連絡を入れたときには、理由をしつこく深掘りしたりするんです。「生理?」と聞かれて否定しても「生理くらいで休まないでよ。今からすぐ来い」と言われて、体調が悪いまま出社することもありました。

 そういうのがだんだんエスカレートしていって、毎日退社時刻を過ぎてから、1時間丸々説教をされるようになりました。それである日、突然休憩室で立ち上がれなくなってしまって。体が動かなくって、ブワーッと涙が出てきて。「壊れた」という感じでした。その記憶すらも前後が消えてしまっているんですけど。

――それでどうされたんですか?

ヒオカ その日付けで辞めました。次の転職先を決めてからじゃないと就活市場で不利になると後で知ることになるのですが、実際にパワハラで倒れてしまうと、辞めざるを得ない状態になるんですよね。

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