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日本は若者への投資や支援が薄い

――高卒で働いて、資金を貯めてから大学に通おうとしている人のケースに何度か接する機会がありましたが、やっぱり日々に疲れてしまったり、節約しても貯金ができなかったりして、諦めざるを得ない状況にあるようでした。

ヒオカ 経済的に後ろ盾がない人間にとっては「社会人になってから大学進学」は全く現実的じゃないですよね。貧困の構造から抜け出すためには学歴が必要なのに、問題解決を先送りにしているだけ。それを18歳やそこらの子供に強要してしまう社会は、あまりにも残念です。

 そういう意味で、日本は若者への投資や支援が本当に薄い。「大学にも行って、生活保護も受給するなんてずるい」みたいな、何に関しても「ずるい」という目線で物事を見ている人が多すぎる気がします。

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――弱者に対しては「普通の生活を手に入れたいなら、その前に何かをあきらめて捨てろ」という意識が強いのかもしれませんね。本来なら「普通の生活すら送れない人」は支援されるべきなんですが、さらに我慢を強いられてしまう。

ヒオカ 大学を無償化している国もありますけど、まだ日本では「社会全体で子供を育てる」的な視点は持ちにくいのかもしれない。 

――著書の中でも「社会が変わるべき」と書いておられましたが、具体的にどのような変化が必要だとお考えですか?

ヒオカ 先ほどの話でもそうですけれど、「貧困問題を解決する」という課題に対して個人が興味を持つこと、そして理解を深めることは必要だと思います。日本財団が2015年に試算した結果、このまま国が「子供の貧困」を放置すれば、いずれ国家が被る社会的損失は最大40兆円まで膨らむこともわかっている。貧困の放置は社会全体に影響するので、子供の教育などへ公共投資を行うべきなんです。

 そういった長期的な視点や、アカデミックな知見や数値に基づく現実的な解決方法が世間に浸透しない限り、現状は変わらないのかなと思います。このまま「生活保護はずるい」みたいな足の引っ張り合いをしているうちは。

2023年度から執筆業に割く時間を増やしていきたい

――ヒオカさんは今、フルタイムで動画編集のアルバイトをしながらライターとしても活動されているそうですね。今後、何か取り組みたいことや関心のある領域はあるんですか?

ヒオカ 実は2023年度から執筆業に割く時間を増やしていきたいと思っていて。これまではフルタイムの仕事があったのであまり取材に行けなかったのですが、これから取材したいこと、書きたいことはたくさんあります。例えば、入管法上の仮放免の問題に関心があります。

――仮放免中の外国人滞在者が不当な扱いを受けている問題を取材したい、ということですね。貧困問題と同様、当事者でなければ知らないことはたくさんあって、実際の声を拾うことで情報の解像度が変わってくると思います。

ヒオカ 貧困や虐待について発信するなかで、同じ経験をしていた人から「自分だけじゃなかったんだと知って、救われました」と言われることがたまにあって。

 何か問題に直面している人は、「同じ経験をしている人がいる」というだけで安心するのかもしれませんね。でもそれってすごく大事だと考えていて。以前は「もう貧困に関する体験談って出尽くしているし、わざわざ自分が書く理由なんかあるのか?」と思っていたんですけど、「救われた」と言ってもらえたことで、今は「あ、(この話を)出してよかったな」と思えます。

撮影=釜谷洋史/文藝春秋

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