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日本人の得意な“問題先送り” シャッター通り商店街の高齢店主たちが「実は困っていない」意外なワケ

2023/02/07

 地方都市に出かけるとよく遭遇するのがシャッター通り商店街だ。昔は、地方都市でも人口が多く、工場や事務所に勤務する人たちが買い物をする場所として、雨に濡れずに過ごせるようにアーケードを施した商店街が数多くあった。

 こうした商店街を今歩くと、ほとんどの店舗が営業をせずにシャッターを下ろしたままの状態にあり、夜中はもとより日中でもちょっと薄気味悪く感じられる。

シャッター通り商店街の背景

 原因は地方都市の衰退と産業構造の変化、そして店舗経営者の高齢化にある。かつては街の中心部には大きな工場や事業所があり、そこで働く従業者が大勢いた。工場で働く人たちは、まだ車などを持つ余裕はなく、なるべく勤務先である工場の近くのアパートや社員寮に居住した。そのため街の中心部は常に活気にあふれ、買い物客や飲食する客で商店街は大いに繁盛したのである。

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写真はイメージ ©AFLO

 しかし、90年代後半以降になると、円高などの環境変化を嫌って多くの工場が海外などに移転。産業構造が変わる中、研究所などに用途が変わり、従業員は工場とは異なりごくわずかになった。車社会になって、街の中心部から離れて郊外に居住する人が増え、近隣にできる大型スーパーで買い物をするようになった。また、商店街の店舗経営者が高齢になり、子供に引き継ぐことができず、そのうちにシャッターを下ろしたままになる、ざっと言ってこんな構図だ。

優雅な年金暮らしができる?

 では商売がうまくいかず、さぞかし困っているだろうと想像するのは早計というものだ。

 多くの場合、年金生活に入っていて、息子や娘は都市部でサラリーマンになっている。店は開けていないものの、生活するには事欠かない。そのうえ使用されなくなった店舗という不動産を持っていても税制上優遇を受けていることが、優雅に構えていられる最大の理由だ。

 シャッター通り商店街にある店舗の多くは税制上「店舗付き住宅」に分類される。たとえば1階が店舗で、2階以上を住宅として利用するといったものを指す。この店舗付き住宅は固定資産税においても、相続時の相続税においても所有している土地が通常の住宅地並みの評価額に特例等で優遇されているのだ。

 固定資産税については「住宅用地の課税標準の特例」という制度があり、通常の店舗であれば、住宅用に供している部分が2分の1以上あれば、固定資産税は小規模住宅地と同じ6分の1に、都市計画税は3分の1に減額される。また、相続時には小規模住宅地330㎡までと店舗に関する特定事業用地400㎡までの合計730㎡について評価額が80%も減免される。