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【ウクライナ戦争勃発から1年】《不肖宮嶋、最後の戦場取材へ》「こりゃ報道の神から見放されたわ」ウクライナ西部リビウに辿り着いたカメラマンが見た“戦時下の光景”

【ウクライナ戦争勃発から1年】《不肖宮嶋、最後の戦場取材へ》「こりゃ報道の神から見放されたわ」ウクライナ西部リビウに辿り着いたカメラマンが見た“戦時下の光景”

2023/02/24
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 2022年2月24日、ロシアのプーチン大統領は隣国ウクライナに突如として軍を派遣した。世界中が戦慄した大国による「侵攻」が始まって、今日で1年が経つ。

 当初はウクライナの劣勢が伝えられた。間もなく首都キーウをロシア軍が占領し、全土がロシアのものとなる――メディアは暗い未来を喧伝し、各国指導者もすでに戦後を考えていたかもしれない。しかし、1年経った今もゼレンスキー大統領のもとウクライナの懸命な抵抗が続いている。計算の狂ったプーチンの戦争はまだ終わりが見えない。

 齢60を超えてなお現役の報道カメラマンとして世界を飛び回る宮嶋茂樹さんは、ウクライナで続く戦争を自身最後の“戦場”と見定め、幾度となく現地に足を運んできた。不肖・宮嶋がこの1年で見たウクライナ戦争の数々の真実を、全5回に選りすぐり、あらためて再公開する。(初出:2022年3月10日。年齢・肩書は当時のまま。全5回の第1回)

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 不肖・宮嶋、最後の戦場取材へ――。

 数々のスクープ写真で知られる報道カメラマンの宮嶋茂樹さん(60)。これまでにイラク、北朝鮮、アフガニスタン、コソボなど海外取材を数多く経験し、あまたのスクープ写真を世に問うてきた。そんな不肖・宮嶋がロシアの軍事侵攻に揺れるウクライナへ。混乱する現地で見えてきた「戦争の真実」とは?

もうこれだけで準備アップアップや

 不肖・宮嶋、久々の海外出張である。そや、新型コロナのせいでこの2年間1回も海外出られんかったのである。しかし今回ばかりはそうも言うとられん。大戦の導火線に火が点けられたのである。サラエボ、ポーランドに続きウクライナ、ヨーロッパは世界大戦の発火点になろうとしているのである。ここは還暦過ぎの老体にムチ打っても現場に駆けつけるべきときであろう。

宮嶋茂樹さん ©文藝春秋

 出国は2月25日と決せられた。

 しかし、それまでにやらないかんことがぎょうさんある。

 いまだ新型コロナ禍オミクロン株なるものが収まる気配がない。そんなご時勢に国際線に軽々しく乗り込み、ヨーロッパ各国に熱烈歓迎入国許されるわけもない。まずは羽田からにしろ成田からにしろ国際線搭乗72時間以内に発行されたPCR検査陰性証明が要るのである。ただ飛行機に乗るためだけで。さらに最終目的地ウクライナ入国48時間以内に英文で発行された陰性証明も必要とされているのである。そして帰国時には隔離期間短縮のため3度目の新型コロナワクチン接種証明も必要なのである。もうこれだけで準備アップアップや。

ウクライナへの侵攻開始、出発を前倒しに

 ルートは24日羽田発の深夜便でトルコ、イスタンブール経由、25日ウクライナのキエフ着。その予定に備え、前々日22日からPCR検査に向かおうとしていた矢先であった。ロシア軍のウクライナへの侵攻が始まろうとしたのは。

FNNプライムオンラインより

「えっ、もう始まるんか? 米バイデン大統領の言うたとおりやんけ」

 今度ばかりはアメリカの情報機関の読みどおりや。

「ロシア軍マリウポリに上陸か?」「ロシア軍ウクライナ東部2州に侵攻」

 これは出発を前倒しせないかん! そやったらPCR検査予約入れ直さんといかん、せやけど今日中にはどこもやってくれんし、どないする?

 右往左往するだけで時間だけがむなしう過ぎていく。

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