1ページ目から読む
2/3ページ目

余った農畜産物を買い上げて貧困層に配ればよいのに……

 アメリカでは農家を救うために積極的に財政政策を行っている。政府が余った農畜産物を買い上げて、貧しい人々に無料で配布する事業も行われており、農家も貧困層も助かる仕組みだ。

 しかし、日本の政府は農家に負担を圧しつけるばかりだ。

〈かつてない異常事態が起きているのに、政府は一向に買い上げなどの財政出動に踏み切らない。コロナ禍では日本の貧困層がさらに苦しくなり、コメや牛乳を「買いたくても買えない」事情があったのもたしかだ。それならば、なおさら、政府がコメや乳製品を大量に買い取るべきだった。フードバンクや子ども食堂といった困窮する人々への人道支援など、買い取った乳製品などを活かせる道はいくらでもあるはずだ。

ADVERTISEMENT

 アメリカでは、コロナ禍の経営難に苦しむ農家に対して総額3・3兆円の直接給付を行い、3300億円で食料を買い上げて困窮者に届けている。また、緊急支援が必要ない平常時にも、アメリカ、カナダ、EUでは設定された最低限の価格で政府が穀物や乳製品を買い上げ、国内外の援助に回す仕組みを維持している。

アメリカの乳牛 ©時事通信社

 なぜ、日本で同じことができないのか。今後近いうちに必ず海外からの輸入に頼れない事態が起こり、乳製品が足りなくなる。政府の言うままに牛を淘汰してしまえば、種付けから搾乳まで最低3年はかかり、いざ必要な時に間に合わないだろう。だが、日本の政府は、援助政策がアメリカの海外市場を奪う可能性があり、アメリカの怒りを買うことを恐れている。そのため目先の牛乳の在庫を減らすことにばかり拘泥し、酪農家を救おうとする姿勢は微塵も感じられないのだ〉