記念ライブの専用サイトには「座席図はイメージとなります。ステージや座席レイアウトは予告なく変更になる場合がございますので、あらかじめ了承ください」と記載されていたという。
座席を販売するときに席種をシートマップに示し、「予告なく変更になる」などの条件を示したからと言って、席種を勝手に変更するなど許されないし、消費者が怒るのも当然だ。
決して安くないチケットを購入し、ライブを楽しみにしていたファンの気持ちを思えば、なおさらだ。この問題は決して些細(ささい)なことではない。本件は表示上の席種と実際の席が異なっていたという特殊な例だが、そもそも日本にはS席が多すぎるのだ。
筆者はかねてより、消費者(ファン)を軽視する事業者側の姿勢に疑問を感じてきた。本稿で改めて問い直したい。
日本には「名ばかりのS席」が多すぎる
そもそもS席とはなんなのだろうか。
通常、コンサートや演劇の会場ではS席、A席、B席などの席種が設けられる。さらにSS席が設定される場合もある。大きなスクリーンを観る映画とは異なり、座席の位置はかなり重要だ。映画館では通常、席種がないことからも明らかだ。席種は当然、主催者側が決める。
S席のSは、「スペシャル」の略。だが、日本国内ではやたらS席が多い劇場や、全席S席というコンサートも見かけることがある。
ステージから遠いとか、構造上ステージが見にくいなどの理由で安い価格の席種が設けられるが、こうした席がS席に含まれる場合もある。まさに「名ばかりのS席」なのだ。これに違和感を覚えたことのある消費者も多いのではないだろうか。
日本にはS席が多すぎる。「名ばかりのS席」ばかりだ――。こうした問題提起をするためには、実際の公演を見てもらえれば一目でわかる。
例えば、東京・日比谷の帝国劇場で行われた「KINGDOM」2月公演。席種はS席、A席、B席の3ランクあるが、席数の半数以上が最上級グレードのS席だ。価格はS席1万5000円、A席1万円、B席5000円で最大3倍の開きがある。