総座席数の61%がS席だった
同劇場の総座席数は1826席。そのうちS席は1121席、A席は497席、B席は208席で、S席の割合は61%ほどになる。日本の多くの劇場と同じように、左右の差はなく、ステージとの距離、フロア(階数)で分ける考え方がとられている。
1階の18列目まではすべてS席、その後ろの19~24列はA席だ。2階は5列目まではS席、6~8列はA席、その後ろの9~13列がB席だ。
帝劇はかなりの大劇場で、左右も広い。奮発してS席を購入し、いい席で音楽や演劇を楽しもうと期待しても、実際はA席と変わらないということもよくある。
例えば、2階5列目の一番端はS席であるが、6列目は中央でもA席になっている。5000円の差があるが、6列目中央のA席の方がはるかに見やすいだろう。S席を購入した客がかわいそうである。
B席より観劇しづらかったA席への疑問
帝劇の1階席は傾斜が緩やかで、特に後列の席だと前の客の頭でステージが見えにくくなる。これは歌舞伎座や新橋演舞場、大阪の松竹座、京都の南座なども同様である。
これらには花道があり、昔の芝居小屋の一階は平土間であった影響であろう。そういう座席であっても多くがS席(1等席)とされ、客は決して安くないチケット代を支払わなければならないのだ。
別の例を挙げたい。10年ほど前になるが、学生たちを連れて帝劇の「レ・ミゼラブル」を団体観劇した。学生はお金がないため、2階の後列席にあてられている一番安いB席を予約したが、1階最後部のA席をあてがわれたことがある。
景表法違反とされた「L'Arc~en~Ciel」の記念ライブとは逆に、座席がアップグレードされたわけだが、前列の観客の頭が邪魔でステージが見えにくかった。2階後列のB席の方がよほど見やすいと感じた。
これまでの記述の通り、日本国内の演劇やコンサートの席種は消費者にとっての席の良しあしをあまり反映していない。値段は高くても、実際はA席やB席のような見えにくいS席も多いのである。