電話は1時間も続いた
オルガと母親の電話はそれから1時間も続いたという。人は極限状態になると自身の母親に助けを求めるものなのだろう。オルガは母親に、ヒグマが今彼女を食べていると叫び続けた。
オルガによると、3匹の仔熊も「食事」に加わっていたという。
約1時間後、オルガはとうとう「もはや痛みを感じなくなった」と話した。
「お母さん、色々とごめんね。許してね。大好き」
最後にその言葉を残し、オルガからの電話は途絶えた。
ヒグマはイゴールの帽子をくわえていた
イゴールの兄アンドレイが現場に到着したのは午後1時頃だった。
その時、現場にはまだイゴールを喰ったヒグマがいた。アンドレイはそのヒグマを目撃したが、丸腰の彼には何もできなかったという。
アンドレイはすぐさまイゴールの妻タチアナに電話し、夫が死んだことを伝えた。
それから程なくして現場に警察と救急車が到着した。
また、事件はロシアの野生生物保護庁にも報告され、ハンターが急行。彼らは死体の上にいるメスのヒグマを見つけた。そのヒグマの歯には、殺害されたイゴールの帽子が挟まっていたという。
ハンターはすぐヒグマに向かって銃を発射した。ヒグマは傷を負ったが逃げ、ハンターたちは木の小屋を作り、朝まで現場に残ることにした。
胃の中からイゴールとオルガの肉が…
翌日の8月14日(日)、ハンターたちの手によって母熊1頭、仔熊3頭が射殺された。仔熊は2歳くらいで、イヌよりも体が大きかった。
射殺されたヒグマ4頭は、エリゾボ地区警察署で解剖された。その胃の中からは犠牲になったイゴールとオルガの肉が出てきたという。
8月17日、イゴールとオルガはコリャーキ村で埋葬された。オルガはこの年、教育大学を卒業し、心理学者としてモスクワ人文科学現代大学に入学していた(ジャーナリストのIgor Kravchukの動画より)。
ペトロパブロフスク近郊は「危険地域」
以上が大まかな事件の経過だ。
この事件が起こったペトロパブロフスク近郊は、人間がヒグマに喰われる事件が数年おきに発生する「危険地域」である。