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反コオロギ派の人にも知ってほしい「昆虫食」のリアルな話

反コオロギ派の人にも知ってほしい「昆虫食」のリアルな話

コオロギ食はなぜ燃えた? #2

genre : ライフ, 社会

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 コオロギ食に批判が集まる中、前回に続き昆虫食の栄養や安全性について聞いていく。回答してくれたのは食用昆虫科学研究会の理事長・佐伯真二郎氏。現在ラオスでNGOとともに食用昆虫養殖事業を主導している、昆虫食の専門家である。

 まずは「なぜわざわざ昆虫を食べるのか?」という点について。2021年にEUのヌーベルフード(新規食材)としての流通許可の際、ミールワーム、コオロギ、トノサマバッタのリスク評価をしたEFSA(ヨーロッパ食品安全機関)は、こう答えている。

「昆虫を食べるかどうかは消費者の判断次第」

「『昆虫を食べるかどうかは消費者の判断次第だ。代替タンパク源としての昆虫の利用は新しいことではなく、昆虫はふつうに世界のたくさんの地域で食べられてきた』これが、昆虫食論の基本的な態度です。

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 石油依存度が高く、投資効率を追求してきた今の農業システムは環境負荷が高く、持続可能ではありません。そこでFAO(国際連合食糧農業機関)は、より歴史があり持続可能である『先住民のフードシステム』を再評価してきました。その中で住民の生計、栄養と環境に貢献できるフードシステムの開発が、昆虫を排除せず、地域ごとの課題解決策として進んでいくことを推奨しています。

 これまで食べていた貧困地域の生計向上になることが期待されますし、先進国でも『地域課題解決策』として考えるとスッキリします。例えば北ヨーロッパは大豆の作付けができない地域で飼料用大豆の輸入国ですので、自給できる副産物、小麦のフスマから脂質とタンパク質を回収できるミールワームを生産しています」

食用昆虫科学研究会の理事長・佐伯真二郎氏(写真:佐伯氏提供)

昆虫の栄養面は…

「飼育効率のいい鶏でいいじゃないか」「フードロスの問題を先に」――色々な声が上がっているが、そもそもFAOは「効率の高いチャンピオン食材を増産して世界中で食べればよい」とは最初から目指していない。

 メディアや投資家向けのキャッチフレーズとして使われることもあるが、あくまで「地域ごとの食料資源の選択肢を増やし、その状況にあった方法へ最適化すること」を目指している。未来に向けた多様化・多自然化の取り組みや研究の一角が、昆虫なのだ。

 次に、栄養面はどうか。