近隣の2つの物件が、坪単価にして10倍ほどの開きがあることも珍しくない。ある分譲地では30坪の土地が300万円、近くの南東角地の好条件の土地が30万円で売り出されている例もある。統一された相場観はまったく形成されていないことがわかる。
たまに広告が消えることがある。成約したのかと思いきや、現地に赴いても何一つ変化している様子はなく、単に反響がなく広告が取り下げられていただけに過ぎなかったりする。
なぜ誰も買わない物件が高値で売り出され、広告が大量に放置されたままなのか。①売主側の理由、②不動産仲介業者の理由を考えてみたい。
売主側の一番の理由は、売主自身に危機感が乏しく、売り急いでいないためだと思う。今なお大半の所有者が土地の相場を正確に把握していないことも一因である。
これが、40~50年前の分譲当初に購入した本人であれば、購入当時の価格の記憶があるために、なかなか損切りに踏み切れないという心情もわかる。しかし、近年は古い旧分譲地も次第に相続が進んでいて、相続者は当時の地価高騰の時代の記憶がないにもかかわらず、売地の市場はさして変化しているようにも見られない。
より重要なのは、物件を仲介する不動産業者側にしても、安い価格にして売り急ぐメリットはないことだ。少しでも高値で成約すれば、より高い仲介手数料を得られるからだ。メリットと言えば、せいぜい取り扱い物件数の豊富さを装える程度だろう。
さらに限界分譲地には「固有の事情」が存在する。それは広告を出した時点で完結する別の市場が存在しており、分譲地の土地取引そのものよりも活発であるという倒錯した現状があるからだ。つまり、不動産業者は土地を売らずとも儲かるのである。
仲介業を「兼業」している草刈り業者
別の市場とは何か。それは草刈りだ。
千葉の限界分譲地の売地の場合、その物件広告を出しているのは「草刈り業者」が圧倒的多数を占める。不動産仲介業のほか、遠方に住んでいて、自分では土地の管理作業が難しい不在地主からの依頼を受けて、年に2回ほど草刈りの作業を行う業者だ。