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歯痛だと思っていたら心筋梗塞のサインだった! 生死にかかわる“意外な関係”とは

「関連痛」のサインを見逃さないために

2018/02/13
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 世の中には「意外なつながり」というのがある。木村拓哉とマツコ・デラックスが同じ高校の同学年だったとか、コリア・レポートの辺真一編集長は俳優の奥田瑛二と大学の演劇部で一緒だったとか、だからどうだと言われても困るが、でも意外な関係に驚いたりする。

 同じことは人間の体の中にもある。一見関係なさそうな臓器と部位が、意外にも同じ神経でつながっていることがあるのだ。今回はそんなお話です。

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 Yさん(49)は、とある有名企業の中間管理職。大学までラグビーの選手だった巨漢だが、今はお世辞にも「引き締まっている」とは言えない。社会人になって運動をしなくなったのに、食欲だけは変わらず、肥満体になってしまったのだ。

 数年前からは血糖値の高さも指摘されていたが、激務とストレスで放置していた。

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歯科医院では「取り立てて治療が必要な状況ではない」

 そんなYさんは一昨年の秋、左の下の奥歯に痛みを感じるようになった。初めは無視していたが、痛みはたびたび襲ってくる。忙しかった仕事がちょっと落ち着いたこともあり、歯科医院を受診した。

 彼の歯痛は、つねに痛んでいるわけではない。なぜか、早朝の出勤時や夜遅くに帰宅する時、あるいは駅の階段を上がった時などに痛くなる。仕事中や自宅でくつろいでいる時に痛くなることはあまりない。歯科医院を受診した時も痛まなかった。

「せめて歯医者さんに診てもらう時くらいは、痛くなってくれないと立場がない……」と歯ぎしりするが、こればかりは仕方ない。

 歯科医院ではレントゲンを撮ったりして調べてもらったが、取り立てて治療が必要な状況ではないと言われた。

 安心したものの、寒空の下を歩いているとやはり奥歯が痛む。

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「正月を迎えられなくなってもいいのですか?」

 その直後、会社の健康診断があった。そして医師から意外な指摘を受けた。

「心電図に異常があるので、心臓の専門医に診てもらって下さい。なるべく急ぎで」

 医師の真剣な眼差しに危機感を抱いた彼は、翌週、循環器内科のクリニックを受診。心エコー検査を受けると、「左室壁運動の異常」が見つかった。そう言われてもよくわからないYさんに、医師は「心臓の一部の動きが悪くなっているんです」と説明。その場で心臓血管外科への紹介状を書いてYさんに渡した。

「あまりのんびりできません」

 いよいよおかしなことになってきた。紹介された病院の心臓血管外科医を受診し、冠動脈造影検査を受ける。結果を見た医師は、大急ぎで手術計画を立て始めた。あまりの急展開に尻込みするYさん。

「年末は忙しいんですけど……」

 医師は言った。

「正月を迎えられなくなってもいいのですか?」

 クリスマス直前の手術が決まった。