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無実の罪で勾留248日、2000億円企業を失うことに…東証一部上場・プレサンス創業社長を襲った「冤罪事件」の発端は

無実の罪で勾留248日、2000億円企業を失うことに…東証一部上場・プレサンス創業社長を襲った「冤罪事件」の発端は

『負けへんで! 東証一部上場企業社長 vs 地検特捜部』#1

2023/04/14

source : 週刊文春出版部

genre : ニュース, 読書, 社会, 企業

note

 2019年12月、大阪の不動産会社プレサンスコーポレーション(東証一部上場)の創業社長である山岸忍氏は、ある土地の売買をめぐり、業務上横領の濡れ衣を着せられ逮捕されてしまった。『負けへんで! 東証一部上場企業社長 vs 地検特捜部』(文藝春秋)には、山岸氏が会社を失いながら、248日に及ぶ勾留に耐え、最強の弁護団チームと「完全無罪」を勝ち取るまでの全記録が綴られている。

 ここでは本書を一部抜粋して紹介。事件の発端となる商談はいかにしてプレサンス社に持ち込まれたのか。(全3回の1回目/続きを読む

◆◆◆

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【事件の経緯】2015年、プレサンス社の土地の仕入れ担当幹部・高野雅英氏が、大阪市内にある女子高等学校「明浄学院」の土地をめぐる商談を持ってきた。明浄学院を運営する学校法人が土地を売りたがっている――総面積1万3701平方メートル、最寄りの地下鉄駅から徒歩2、3分。天王寺駅という巨大ターミナルも徒歩圏内で、周囲は文教地区のため住宅地としては抜群の立地だった。

 しかし、山岸氏はこの商談を問答無用で却下する。それは、明浄学院の理事長とともに学校関係者として面談に臨んだ人物が、「一般人ではないような風体」であり、この人物を調査してみると、好ましくない風評をつかむことができたからだった。

 ところが、それから数カ月が経った2015年12月、プレサンス社の仕入れ担当幹部であり、のちに逮捕されることとなる子会社の代表・小森氏から、またしてもこの商談についての提案があった。

山岸忍氏

ふたたび浮上した商談

 いったんは頓挫した明浄学院の案件は、小森によって再浮上した。彼が大手不動産会社・大京からわが社に移籍してきて、まだ6ヵ月目のことである。

 入社のきっかけは先に名前の出た不動産会社TGF社長の山本さんより、

「小森さんが大京を辞めたがっているんだけど、プレサンスでどうですか?」

 と打診があったからだ。

 同時にプレサンス社員で東海地方の仕入れを統括していた平野賢一もまた、小森の入社を推挙してきた。

 平野は先に小森の推薦で大京からプレサンスに移ってきた人物で、とても仕事のできる男だった。信頼できるふたりが推してきたので、雇うことにした。