スタジオには観覧の多くの若者たちがいて、とんねるずらとともに暴れることもよくあった。つまり『オールナイトフジ』は、『夕やけニャンニャン』、そしておニャン子クラブを生み、テレビにおける「素人の時代」を加速させたのである。
若者の遊び場
そこには時代背景もある。1980年代前半から中盤、日本社会にはバブル前夜の高揚感があった。
世の中全体が平均して豊かになった結果、大学生などの若者も高級なブランド物の洋服を着るようになるなど消費文化が大きく花開こうとしていた。そのことを批判して「大学のレジャーランド化」が指摘されもしたが、若者が遊び志向を強める妨げにはならなかった。
そしてテレビは、そうした若者にとって最も楽しめる遊び場となった。『オールナイトフジ』から『夕やけニャンニャン』へと至る流れは、そのような時代のなかでこそ生まれ得たものだっただろう。
『オールナイトフジ』には、ある名物ディレクターがいた。とんねるずなどに「みなとっち」と呼ばれていた彼こそが、現・フジテレビ社長の港浩一である。今回の復活も、当然港浩一の肝いりということになる。
だが時代は変わった。いまは1980年代のように経済が右肩上がりの時代ではない。むしろ経済の長期停滞が続くなかで、先行きの不安が社会全体を覆っていると言ってもいいだろう。そうしたなかで、『オールナイトフジ』の復活に成算はあるのだろうか?
なぜ元テレビ東京社員がMCに抜擢されたのか
おそらくかつてのフォーマットをそのまま持ち込んだのでは難しいだろう。むろんそのあたりは制作陣も心得ているに違いない。なにか時代に応じた部分が必要だ。
その意味で、今回オズワルド・伊藤俊介、さらば青春の光・森田哲矢とともに佐久間宣行がMCに加わるのは興味深い。
ご存じの通り、佐久間は2年前まではテレビ東京の社員。『ゴッドタン』『あちこちオードリー』などの演出家・プロデューサーとして名を馳せた。
そしてテレビ東京在籍時代から『オールナイトニッポン』のパーソナリティを務めて話題を呼び、フリーになった現在はさらに活躍の場を広げている。