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genre : ニュース, 社会, 政治

父は家庭の外では、人当たりはそんなに悪くなかったですが、学会員に対してだけは「帰れ帰れ」と叫んで。そのうち学会の人たちは、父が不在にしていそうな時間をねらって来るようになりました。

私は母の死を経て、この信仰は誰も幸せにしないと思ったので、なんだかんだと理由をつけて拒絶しました。中学生だったので「宿題があります」とか、「夜は出られません」とかです。でも、おとなになったあとも、ずっと来ていましたね。選挙前は特にそうです。「公明党に入れてください」と。適当にあしらうこともあれば、その政党の政策に私は賛成できないからと言って帰ってもらうこともありました。でもそれでもしょっちゅう来ていました。あとは池田さんが配ったお米をくれるとか、いろんなものを持ってうちに訪ねてきていました。私の心は何があっても動きませんでしたけれど。

公明党が与党となったことに衝撃を受けた

おとなになってくると、公明党絡みでひどいことがたくさん見えてきて、公明党が自民党と連立政権を組んだり、いろんな戦争に関わりかねない法案に賛成したりしているのを見たときに、そして、創価学会員が足並みを揃えてついていっていることに、衝撃を受けました。うちの母も生きていたら、ここに投票するんだろうと思ったら、びっくりしてしまって。創価学会という組織を見る眼はネガティブになりました。

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母のお葬式のことを思い出すと、母の死んでいる顔が記憶によみがえってきます。でも何ひとつ感じられないんです。悲しみも何もない、本当に無の心の状態になってしまって、それ以上思い出そうとするときっと良くないな、精神衛生上、良くないと思って、母のことをあまり考えないようにしていました。いまもその無になってしまうんです。

「死んだ母が可哀そう」という気持ちを乗り越えて

でもマンガ家になってから、いつか母のことを描きたいとは思っていました。あまりにも傷がなまなましいし、自分の技量的に描けないかもと思って保留にしつづけて。そのうちに父のことを描くことになって、ついでに母も宗教やっていましたという描写を、ちらっと入れたんです。