今では議員室と応接室、秘書が仕事をする部屋と3室があるかなり大きなスペースになった。ようやく「仕事場」らしくなった、と言える。
国会議員の場合、秘書が3人公費で付けられる。政策秘書、第一秘書、第二秘書と呼ばれ、国家公務員として国から給与が支給される。国会議員に優秀な秘書、とくに政策づくりに関与する「政策秘書」を置くことで、国会議員がより政策づくりに深く関与できるようにしようという考えだ。
国会議員はどんな役割を果たすべきなのか
ところが、最近、この公設秘書が形骸化している。国家試験を通った人を政策秘書にするという考え方で「政策秘書」制度ができたが、実際には長年務めた秘書が簡単な試験で「政策秘書」になるケースが増えた。かつては難関とされた試験組はなかなか重用されなくなっている。というのも国会議員側が政策秘書の使い方が分からず、パーティー券を売らせるような私設秘書がやる仕事をあてがっているケースが多いからだ。
そもそも、国会議員会館に公設秘書3人がそろっている国会議員は少なく、政策に関心を持たない議員では「留守番」の1人を議員会館に置いて、2人は選挙区に貼り付けているケースが多い。つまり、国会議員の仕事の仕方が、選挙優先の昔からのままになっているため、広い議員会館の部屋も公設秘書もまったく生きていないのだ。
国会議員の仕事の仕方を変えていけば、おのずから必要になる議員会館の部屋や、議員宿舎のあり方は変わってくる。明治以来続く国会議員の「特権」を守ることではなく、国会議員はどんな役割を果たすべきなのか、その仕事をフルにこなしてもらうための設備や制度はどんなものが必要なのかを、一から考え直す時ではないか。
経済ジャーナリスト
千葉商科大学教授。1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。