京都大学や東北大学、金沢大学といった国立大学で学生寮廃止の動きが相次いでいる。こうした学生寮は「月額700円」など寄宿料が格安なため、経済的に苦しい学生のセーフティーネットになってきた。なぜ廃止してしまうのか。ジャーナリストの田中圭太郎さんが取材した――。
大学側が一方的に廃寮の「作業」
金沢大学で58年の歴史があった泉学寮が、2023年3月31日に廃止された。学生は存続と話し合いを求めてきたが大学は聞き入れず、最後の日は十数人の大学職員によって事務的に廃寮作業が行われた。
泉学寮の寄宿料は月額700円で、経済的に苦しい学生のセーフティーネットとして機能していた。
ただ、こうした格安の寮を廃止する動き金沢大学に限った話ではない。同様のことが、他の国立大学でも起きているのだ。しかも、表向きの理由は老朽化だが、取材をしてみると実際には別の理由があることがうかがえる。
本稿では、国立大学の寮廃止の背景を考えていく――。
金沢市内の繁華街に近い場所にある金沢大学泉学寮。2023年3月31日の15時30分ごろ、十数人の大学職員が寮に入ってきて、まだ居住している学生がいる中で廃寮の作業を始めた。
職員は寮の食堂から学生を出し、打ち合わせを済ませた後で、一人ひとり呼んで部屋ごとに居住者を確認する。次の写真は寮生が撮影したものだ。
寮生70人が寮内で生活していたが…
この4日前、引っ越し先が見つからない寮生が7日間の廃寮延期を求めた。大学側は廃寮の時期こそ変えなかったものの、退去の1週間延期を認めた。3月31日以降に寮に残る学生は、4月7日までに退去することを約束する確約書に記入をさせられた。
寮で暮らしていた学生は約70人。多くの学生がこの日までに寮を去る中、1週間残った学生は17人だ。その17人が寮内にいる中で、廃寮の作業は事務的に、淡々と進められた。
18時過ぎに職員が「廃寮作業が完了しました」と寮内放送をする。「学生寮は令和5年3月31日をもって廃寮しました」と大きく書かれた看板が、玄関前に置かれた。