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アメリカ人の熱狂ぶりに出演者が驚いた…「スーパー戦隊シリーズ」が米国で30年続く長寿番組になったワケ

source : 提携メディア

ホテルで偶然観た番組に心を打たれ、東映の事業所にまで乗り込んだサバン氏は、のちにアメリカ版戦隊シリーズ「パワーレンジャー」のクリエーター兼制作統括を担当することになる。

戦略は大成功し、今日メディア王として知られるサバン氏のキャリアの中核を築いた。数十年後のインタビューでもサバン氏は、「いまでも大好きなんですよ」とスーパー戦隊シリーズへの愛を語っている。

製作費のかかるアクションシーンは使いまわし

サバン氏は作品の愛と情熱に燃えていただけでなく、きちんとした勝算があった。

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東京のホテルで番組を観た瞬間、低コストでローカライズを迅速に済ませ、早々に米TV局に売り込める算段が浮かんだのだという。Netflixの取材に対し、同氏はこう語る。

「アクションシーンはすべて、(マスクで)顔が見えません。ちょっとしたひらめきでした。(アメリカ人俳優たちで)アメリカパートを撮影して、制作費用がかさむアクションシーンと編集でつなぎ、マスク着用シーンの音声については吹き替えを施せば、アメリカ版を制作できます。コレだと思いました」

作品のベースとして、当時放送中の最新シリーズ『恐竜戦隊ジュウレンジャー』が選ばれた。時を越えて復活した悪の組織と立ち向かうため、長年の眠りから覚めたヒーローが集結する物語だ。

80年代後半からの恐竜ブームに乗り、日本でも成功を収めている。日本版は成人を中心に高校生2人を加えたキャスティングだったが、アメリカ版は高校生たちのグループを主役に据えた。

だが、放送局の反応は軒並み芳しくなかったようだ。唯一検討すると答えた米FOXネットワークスは、まずはパイロット版をテスト会場で上映し、高評価を得ることを条件とした。審査員役は、最大の視聴者であり、そして残酷なまでに素直な感想を漏らす、ほかならぬ子供たちだ。

22分間のパイロット版を上映したテスト当日の様子を、サバン氏はこう語る。

「ダイヤルテストをしました。右に回せば好き、左に回せば好きじゃない。番組を流すと、ダイヤルは右に回りました。そして22分間、ずっとそのままだったんです」

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