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「私は運がよかっただけ」4人死亡、4人重軽傷の"本州最悪の殺人熊"と戦って生還した58歳男性がやったこと

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genre : ニュース, ライフスタイル, 社会

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「26日も同じ場所に入ろうと思って、朝4時30分に軽トラで自宅を出て、五戸、倉石経由で6時過ぎに着くと今回の(第3事故)現場には既にパトカーが2台いた。

軽トラを入れるスペースがないので県道を少し戻って県道脇に車を置き、大根畑を横切って畑の作業道に入ったら、前に黒いパジェロミニ(注・証言ママ。暗くて黒に見えたか)が停まっていた。ただ、第3犠牲者の車だとは知らなかった」

「笹藪の熊の出入口をトンネルと言って、タケノコ採りの人もそこから入る。

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6時45分ころ爆竹やロケット花火を鳴らしてから笹藪に入ると、途端に強烈な獣臭がした。

沢は急な谷になっているが、ところどころ平らな所があってタケノコやワラビがあった。

背中には大きなザックを背負い、腰にも籠を下げて、タケノコを4kgほど採ったらザックに移した。笹が密生していて見通しが全くなかった」

1.2mほどの距離で、20分も熊とにらみ合う

「7時15分ころ、がさがさ音がして驚いたが、斜面がきつくて動けなかった。

また音がしたが、同業者かと思った。以前、第3犠牲者とこの付近で話をしたことがあったからだ。

斜面の下から見上げた方が確認しやすいので、顔を上げた。すると、笹を透かして黒い影が見えたので、熊取平の方で2人襲われて亡くなっているのを思い出し、震え上がった」

「熊が自分を狙うように、私から1.2mほどの距離まで来た。

斜面がきつくて、熊もやっと立っている状態だった。

熊はずっと私を見ながら、ふっ、ふっと呻(うな)り続けた。

自分も呻って見せ、足で竹を打つように踏んだ。心臓がばくばくとなった」

「熊はちょうど私に覆いかぶさるような位置になり、そのままにらみ合って15~20分経った。リュックを下ろしたほうが良かったかもしれないが、そこまで気が回らなかった。

煙草に火を付けて熊の足元に投げた。が、雨が降っていたので効果がなかった(注、現地は当日、朝から降雨があった)」