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日本は既に「ギャンブル大国」大阪カジノより問題なのは…ギャンブル先進国のイギリスで賭博場が減っているワケ

source : 提携メディア

genre : ライフ, 娯楽, 社会, ヘルス

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大阪のIRを巡っては、依存症のほかに夢洲の地盤沈下による公費負担の懸念もある。大阪出身の筆者はカジノ推進派ではないが、日本の左派メディアは改憲派の維新が進める政策にはことごとく反対のように映る。海外のカジノで106億円を使い果たした大王製紙元会長、井川意高氏の例はあるものの、規制が行き届き、従業員が目を光らせるカジノは実は「最悪の賭博場」ではない。

イギリスでは既に主流はオンラインへ

話を筆者の暮らす英国のカジノに戻す。

北アイルランドを除くグレートブリテン島のギャンブル施設数は8408カ所(前年比2.5%減)。うちベッティングショップは6219店だが、8年連続で減っている。オンラインのベッティング、ビンゴ、カジノは64億ポンド(約1兆880億円)と実際の店舗における35億ポンド(約5950億円)を凌駕する。

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英国のギャンブルの主流は既に実店舗からオンラインへと移行している。中でも人気なのはスロットゲームだという。

英上院ギャンブル産業の社会的・経済的影響に関する特別委員会は20年7月に報告書「ギャンブルの害 行動を起こす時」を発表している。問題を抱えるギャンブラーは約33万人で、平均して毎日1人が自殺している。少年少女が最も危険にさらされ、11~16歳の問題ギャンブラーが5万5000人もいた。少年は成人男性の3倍も問題を抱えていた。

1人の問題ギャンブラーが周辺の6人に不幸を広げ、計200万人が家庭崩壊、犯罪、失業、ホームレス、ひいては死亡や自殺などの被害に遭っていた。方や、ギャンブル産業は年間15億ポンド(約2550億円)を広告に費やし、ギャンブル収益の60%は問題ギャンブラーかリスクを抱える5%の人々からもたらされていた。

新法制定とスマホの普及でギャンブルが自由化した

英国議会はギャンブルの禁止も促進も望まない中立スタンスを歴史的にとってきたが、2001年の「バッド報告書」がギャンブル自由化の青写真を示し、ネオリベラリズム(新自由主義)を推進したトニー・ブレア首相時代の05年に「ギャンブル法」が制定された。これで無防備な消費者は競争原理を強化したギャンブル市場の荒波に放り込まれることになる。