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日本は既に「ギャンブル大国」大阪カジノより問題なのは…ギャンブル先進国のイギリスで賭博場が減っているワケ

source : 提携メディア

genre : ライフ, 娯楽, 社会, ヘルス

この法律を制定した労働党の担当大臣テッサ・ジョウェル氏(故人)は後に「最大の後悔の一つ」と語っている。ルーレットを含むさまざまなゲームを搭載した賭博電子ゲーム機の賭け金は1回100ポンド(1万7000円)に固定され、「ギャンブルのクラック・コカイン」と呼ばれるようになる。巨万の富を築いたギャンブル業界の経営者は少なくない。

ギャンブル広告の数も激増。13年、規制当局はテレビ広告の数が過去6年間で7倍になったことを明らかにした。最近、サッカーのイングランド・プレミアリーグのクラブはユニフォームの前面からギャンブルのスポンサーシップを26-27年シーズン以降に撤回することで合意した。

第二の激変はスマートフォンやその他の端末の普及だ。24時間365日いつでもどこでも監視されることなくギャンブルにのめり込めるようになった。ギャンブルが自由化されて以来、規制は完全に後手に回った。特別委員会は今こそ政府は行動を起こすべきだとして、3年ごとの賭け金の上限と賞金の見直し、罰則強化など50以上の提言を行った。

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スロットが止められず自宅を担保に…

英国でギャンブル被害防止に取り組むアダム・ブラッドフォードさん(30)の父デービッドさん(66)は、ひどいギャンブル依存症だった。「今から9年前のことです。会計士として周囲からも信頼されていた父が帰宅して『明日、裁判所に行く』と告白しました。翌日、父は裁判所から戻らず、弁護士から自宅に電話がかかってきました」と振り返る。

父はオンラインのスロットマシンにのめり込み、こっそり自宅を担保に入れて50万ポンド(8500万円)の借金をつくっていた。勤め先から5万ポンド(850万円)を盗み、罪に問われた。アダムさんは父と一緒にギャンブル依存症の恐ろしさを訴え、19年に賭博電子ゲーム機の賭け金の上限を1回100ポンドから2ポンド(340円)に引き下げることに成功した。

「05年のギャンブル規制緩和の見直しが長い間行われず、被害を広げてしまいました。ギャンブル産業と政界のつながりが背景にあります。約50万人がギャンブル依存症とされ、潜在的なリスクはさらに数百万人に広がるとみられています。英国政府は現在、ギャンブル法をデジタル時代に対応させるために見直しています」(アダムさん)