文春オンライン

上海のマンション1室分で、日本ならビル1棟が買える…中国人富裕層が日本の不動産を爆買いする本当の理由

source : 提携メディア

note

狙い目は「大きい駅から徒歩6分以内、山手線の南側」

いろいろ経験を積み、不動産を買う条件として3点を挙げる。まず最寄りが大きな駅であること、駅から徒歩6分以内であること、資産価値の高いJR山手線の南側であることだ。

「一つの物件だけでも毎月の家賃収入は30万円以上あるので、自宅のローンがカバーでき、家賃収入で固定資産税も賄えます。いまの会社に今後も勤めたいと思っているのですが、定年になったら、毎年不動産だけで600万円ほどの収入になる計算です。老後の生活費には困りません。老後の準備は万全です」

A氏が不動産を買うようになったのは、もちろん、資産を増やすことが大きな目的だが、「老後の不安」が常に念頭にあるからだという。

ADVERTISEMENT

彼の生活は安定しているが、常に「老後」を考えるのは、脳裏に母国・中国の国内事情がちらついているからかもしれない。日本以上のスピードで少子高齢化が進む中国では、老後に不安を覚える人は少なくない。

多くの中国人がわざわざ日本まで不動産を買いにやってくるのも、投資目的や中国社会の不安定さだけが理由なのではない。

中国バブルが崩壊する可能性、不動産不況、政治問題など、国内のリスク要因がとても多く、自らの老後が心配だから、資産を海外に持ち出せる人ならば、どこかに財産となる「モノ」を所有しておきたいのだ。

現金は紙切れに変わってしまうかもしれないが…

政府の政策により、90年代初頭まで自らの不動産を所有できなかった中国人にとって、何かを買う=モノを持つ、という認識だ。そうした“習性”は日本に住むA氏にも備わっているようだ。中国に住む両親は不動産も所有するが、「この先、何があるかわからない」とA氏は言う。他の多くの中国人から同様の話を聞いた。

中国の医療体制の脆弱(ぜいじゃく)さ、医療の構造的問題も、海外で不動産購入に走ることと関係がある。日本に家を持ち、永住権や国籍を取得して、日本の医療を受けながら老後を過ごせたら本当に心から安心だ、と語る中国人が多いのだ。中国で現金は、ある日突然紙切れに変わってしまうかもしれないが、日本の不動産ならばリスクは低い、と彼らは考える。