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「うちは紙ストローは作りません」岡山の日本一のストロー会社が「脱プラ運動」に真っ向から対抗した結果

source : 提携メディア

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ペンチで先端をつかんでもストローはなかなか抜けない。鼻から血がにじみ出ており、ウミガメは痛みに悲鳴を上げているようだ。8分後に抜け出たストローは長さ10センチ以上。血まみれになって変形していた。

チームリーダーのドイツ人海洋生物学者クリスティーン・フィグナーは一部終始を撮影し、ユーチューブへ投稿。動画は瞬く間に世界を駆け巡り、大々的な脱プラ運動を引き起こした。これまでに1億回以上も再生され、プラスチックを取り巻く環境を様変わりさせた。

あまりにもウミガメ動画のインパクトが大きかったことから、「BTTV」と「ATTV」で時代を区分する動きもある。前者は「ビフォー・ザ・タートル・ビデオ(カメの動画前)」の略、後者は「アフター・ザ・タートル・ビデオ(カメの動画後)」の略だ。

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スタバ、マックがプラ製ストローの廃止を決定

ATTV3年の2018年に入って脱プラ運動は加速した。スターバックスコーヒーやウォルト・ディズニー、マクドナルドなど米著名企業が相次ぎプラスチックストローの廃止を決定した。

民間企業と歩調を合わせる形で各国政府も動き始めた。欧州連合(EU)が使い捨てプラスチックの利用に歯止めを掛ける規制案を示すと、G7が首脳会議(サミット)の場で海洋での廃プラスチック(廃プラ)削減を促す憲章を採択したのである。

要するに、世界的に官民が連携する形で脱プラの大合唱が起きたということだ。

ウミガメ動画を撮影したフィグナーは米タイム誌の「次世代のリーダー」に選ばれ、「脱プラ運動の旗手」と見なされるようになった。ATTV4年にテキサスA&M大で博士号を取得し、今もコスタリカを拠点にしてウミガメの生態などの研究活動を続けている。

「うちはプラスチックストローだけです」

沿岸地帯で重化学工業が発達する瀬戸内海も、歴史的に海洋汚染に振り回されてきた。高度経済成長期に産業排水が流入して、プランクトンが大量発生して赤潮が頻発。魚の漁獲高は急減し、海水浴客は消え去るなどで、「瀕死の海」という呼び方が広がった。