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日本で初めて承認された経口中絶薬「メフィーゴパック」の利点と必ず知っておきたい懸念点

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genre : ライフ, 医療, ライフスタイル, 社会

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主流だった掻爬法は「女性への罰」ではない

以前、日本で主流だった掻爬法は女性の体を傷つけるやり方で、中絶をしなくてはならなくなった「女性への罰」として行われてきたという意見もあるようだ。実際のところ、掻爬法は女性の体への負担が大きいのだろうか。2012年の調査によると、掻爬法による合併症は、最も多い再手術が必要な取り残しの起こる「遺残」の発生頻度が0.3%、大量出血が0.03%、子宮穿孔・損傷が0.02%となっており、全体として発生率は非常に低いと言える(※1)

「掻爬法には遺残が少ないという利点がありますが、子宮内を傷つけるリスクがあります。でも、日本では合併症は少ないと思います。また、いずれの手術でも麻酔をしますから、掻爬法だから痛いということはありません。以前、掻爬法が主流であったのは、掻爬法の機械しかない医療機関が多く、多くの産婦人科医が新しい機器や手技を安全に取り入れるには時間がかかったからであって、特に罰として行っていたわけではないでしょう」(宋さん)

一方、こうした説が広まるのは、中絶をする女性には説教をしなくてはいけない、高圧的に対応すべきという医師が、特に昔は多かったからではないかと宋さんは話す。「避妊をしても必ずしも妊娠を100%防ぐことはできない」(宋さん)のに、中絶するとなると心身に負担を負う女性だけが責められ、中絶への偏見がいまだに根強いことは大きな問題だ。

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「医療者の態度や中絶後の心のケアなど、至らない部分もあったと思います。それは同じ医療者として申し訳なく思うところです。ただ、手術自体が問題かというと決してそうではありません。また、だからといって過去に流産・中絶で掻爬法による手術をした人に、自分が受けたのは暴力だったんだと思わせてしまうのは二次被害ではないでしょうか」(宋さん)

手術による中絶と薬による中絶の違い

手術と薬剤による中絶では、どのような違いがあるのだろうか。もっとも大きいのは、中絶の完了までにかかる時間の長さだ。