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米国研修で開眼 “農業を科学する”5代目社長、ミニトマトに活路 リスキリング・スマート農業で売り上げV字回復

source : 提携メディア

genre : ビジネス, 国際, テクノロジー, 働き方, サイエンス

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「とりわけ、重労働だったトマトの収穫や運搬作業が減り、労働時間を大幅に短縮できました。一方で、単位面積当たりのミニトマトの収穫量も全国平均に比べて4倍になり、それだけ農業生産性を高められたわけです。トマトは日照量の長い夏には冬の2倍収穫できるため、季節による作業量のバラツキが必然的に大きくなります。ロボットと手作業をうまく組み合わせることで、対応できるようになるのではないかと期待しています」

ちなみに、農林水産省の「2002年産野菜出荷統計」によると、ミニトマトの10アール当たりの全国平均の収量は5.88トンである。

トマトの根を地上高1メートルにするわけ

とはいえ、自然の産物を扱う現場の作業を100%自動化するのは無理で、どうしても人材の確保が必要になる。「そのなかでも弾力的な作業のシフトのことを考えると、パートの主婦などを含めた女性従業員が戦力の主体になってきます」と浅井社長は言う。実際に、同社の従業員の約90%を占めるのが女性だ。そして、彼女たちから寄せられた要望に耳を傾けながら、働きやすいシステムに切り替えてきた。

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「フルタイムの正社員とパートの中間として、“フレキシブル社員”という雇用形態を3年前に設けました。育児や家族の介護といったライフスタイルに応じて、『週4日勤務、1日6時間労働』といった具合に、働き方を自分で選べる仕組みを導入しています。子どもが大きくなって手がかからなくなったら、フルタイムに移行することもできます。女性従業員からは好評で、採用にも苦労していません」

そうした女性従業員が働きやすい現場にしていくための改善にも余念がない。通常のトマトの収穫は、かがんだ姿勢で行うため、どうしても腰が痛くなってしまう。ミニトマトを水耕栽培している浅井農園では、根の高さを地表から1メートルほどに持ち上げて、そこから茎を伸ばしている。なぜなら、腰をかがめなくても収穫ができるようになるからなのだ。当然、生産性のアップという副次効果も得られる。