下着姿でしばらく写真を撮られたあと、カメラマンは一度カメラを置いて、ハンディカムを持ってきた。仕切りを動かして、ホリゾントと白い布で囲まれたちいさな部屋にしてから、
「それじゃあ、脱ぐところ動画撮ってくから」
と、言われた。まあそうか、そうだよね、そうだよな、下着も取るんだよね。と、頭の中でしゃべるように繰り返してから、「はい!」と、返事をした。はい、の、い、が、捲れ上がっていた。ばれないようにすばやくホックを取ろうとしたら、カメラがまだ回っていないと止められた。
カメラマンの津崎が、動画のRECボタンを押す。わたしはレンズを見るように言われ、もうここまできたらさっさと脱いでしまいたいな、と思いながら、ブラジャーのホックに手をかける。
「どんなタイイが好き?」
わざと動画にしっかり入るように大きな声で、津崎が聞く。インタビュー動画的なものを、下着を脱ぐ動画と同時に撮るつもりらしい。とっさに質問の答えを考えるけれど、「タイイ」という言葉がそもそもなにを指すのかがわからない。
「えっと、タイイ、ってなんでしたっけ」
まるきりわからないわけではないよ、たまたま忘れているだけだよ、というていを装って、ごまかしながら聞く。津崎は鼻から息をふん、と吐いて、
「セイジョウイとか、キジョウイとか、バックとか。どれが好きだった?」
と、聞き直す。
ああこれさっきの、面接シートのときに聞いておけばよかった。隙を見てこっそり調べたらよかった。ほんとうになんのことかわからない、どうしよう、と思いながら、しばらく目を泳がせていると、だんだんと津崎の表情も不安げに曇っていく。
「どうしたの? 恥ずかしがらなくていいんだよ。一個ずつ聞いていこうか。セイジョウイは好き?」
「……わかんないです」
「えー。キジョウイは? やったことある?」
「えっと……たぶん、ないです」
「え、バックでしかやられたことないとか?」
「ばっく……っていうのは、いったいどういう」