同調査によると、加害者は主にリーダーである模様だ。加害者の82.0%がリーダーであり、未成年のスカウトが加害者に回る事例は3.8%に限られる。近年ではBSAは女性スカウトの加入も受け付けているものの、報告されている事例はほぼ男性の同性間での性的虐待となっている。
被害申し立て8万件超、賠償額は3300億円に上るとの指摘も
BSAに対しては数十年前に遡り、性的虐待を受けていたとする訴訟が相次いでいた。同団体は2020年2月、米連邦破産法11条の適用を東部デラウェア州の裁判所に申請した。裁判所の命令で債権の取り立てが停止され、被害者との和解に向けた協議を進めていた。
BSAは4月19日、連邦破産法第11章から脱却したと発表した。事件の生存者の85%の支持を得、裁判所が承認した再建計画に基づき被害者への補償基金が設立されるという。
ただし、BSAの進む道は依然として険しい。ペンシルベニア州立大学のマリー・ライリー教授(法学)は、米メディアのカンバセーションに寄稿し、事件を解説している。
ライリー教授は、「ボーイスカウトは破産事件の後、不確かな未来に直面している」と指摘する。過去80年間に性的虐待を受けたとする元スカウトたちの申し立てが約8万2000件寄せられており、賠償額は少なくとも24億5000万ドル(約3300億円)に上るうえ、団体が提示した1人3500ドル(約47万円)の和解オプションに合意していない事例がまだ7万5000件ほど残っており、金銭的にも時間的にも莫大(ばくだい)なコストを要するという。
心の傷を負わせた大人たちの罪深さ
世界のボーイスカウトは名誉を重んじるよう教育されている。が、リーダーたち自身の愚かな行動により、BSAの名誉は地に落ちた。
各地方支部は、本来はスカウトの活動の場に充てるための山林を所有しているが、これらを売り払うことも視野に入ってきている模様だ。「その大部分を喪失する可能性がある」とライリー氏は指摘する。しかし真の問題は金銭ではなく、スカウトたちの心に残った、消えることのない傷跡だ。