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「人工甘味料は体に悪い」は盛られすぎている…「アスパルテームの発がん性報告」に現役医師が訴えたいこと

source : 提携メディア

genre : ライフ, ヘルス, 医療

同様に、「人工甘味料」の定義をいじって多重性を増やすこともできるし、「人工甘味料の消費量が多いか少ないか」という分けかたを変えて多重性を増やすこともできます。

栄養統計はそうした多重性の塊なのです。

「甘いものは体に悪そうだ」というイメージ

第三に、そもそも「人工甘味料」という概念に意味があるかどうかが不明です。

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歴史上、毒性のある「酢酸鉛」が甘味料として使われた時代もあります。「ズルチン」という人工甘味料も毒性のため使われなくなりました。

「チクロ」という人工甘味料は体に悪いという説に基づいて使われなくなりましたが、実はそれほど悪くないという説もあります。

それぞれ化学的性質はまったく違う物質ですが、甘いという共通点から「人工甘味料」とまとめて呼ぼうと思えば呼べてしまいます。

こうして歴史的に形成されてきた「甘いものは体に悪そうだ」というイメージを持ったままデータを見ると、見たいものが見えてくるのは前述のとおりです。

WHOが主な問いとした「人工甘味料で体重は減らせるのか」についても、データは玉虫色です。表には体重が-0.71kgと減量効果が少しあり、BMI(体重÷身長の2乗)は有意差なしという数字が載っています。

減量効果が小さすぎてBMIとしては検出できなかったのだ、とも解釈できそうですが、相反する数字もあります。BMIが30以上の「肥満」(日本では25以上)になる率は逆に1.76倍だというのです。ここをつまみ食いして「人工甘味料は太る」と考える人がいるかもしれません。

その結論が間違いだとも言い切れませんが、もっと大切なのは、いまあるデータからは明確な結論は出せないということです。

仮に多少体に悪いとしても、好きなら口にしていい

最後に、そもそも保健機関が人工甘味料を推奨とか非推奨と言うのがおかしなことです。

現代社会では医学・健康の観点から食べ物を格付けするのが当たり前のようになっていますが、これは食べ物を、ひいては人間をまったくわかっていない考えです。