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「人工甘味料は体に悪い」は盛られすぎている…「アスパルテームの発がん性報告」に現役医師が訴えたいこと

source : 提携メディア

genre : ライフ, ヘルス, 医療

あなたは今日の夕食に何を食べたいですか? 好きなもの、おいしいもの、いまの気分に合うもの、季節を感じさせるもの、家族や友人とのイベントを盛り上げるもの。いろいろな回答があると思います。

「体にいいもの」と考えた読者もいるかもしれませんが(そういう人はこの記事に同意できないと思いますので、続きは読まないでどうぞ成分表のチェックを続けてください)、それは多様な価値観のひとつでしかありません。

「健康が第一」も独善に過ぎない

ほかの価値観から人工甘味料を選ぶ人に対して「健康が第一」と押し付けるのは、多様性が叫ばれる現代には許されない独善です。

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もちろん、本当に危険で食べないほうがいいものはあります。筆者も無免許でふぐ料理を作ろうとしている人を見たら止めます。しかしそれは程度の問題です。ふぐの毒と、人工甘味料にあるのかないのかわからない微妙な毒性とでは、危険の程度が何桁も違います。

統計技術が発達し、データが蓄積されたことで、人工甘味料が体に悪いかどうかといった、細かすぎて体感しようのない論点を、一見「科学的」な専門用語を使って扱うことができるようになってしまいました。

そんなことより、コカ・コーラとペプシコーラのどちらがおいしいかを考えたほうがよほど生活を豊かにします(筆者はコカ・コーラが好きです)。

アスパルテームの発がん性にしても、何十年も食品に使われてきて誰も気づかなかったほどの微妙な差があるかどうか、いまさらIARCが評価することに筆者はあまり意義を感じません。

そんな情報なら知る必要はありません。アスパルテームを使った食品が好きなら買う、嫌いなら買わない。それでいいのではないでしょうか。

大脇 幸志郎(おおわき・こうしろう)
医師
1983年、大阪府に生まれる。東京大学医学部卒業。出版社勤務、医療情報サイトのニュース編集長を経て医師となる。首都圏のクリニックで高齢者の訪問診療業務に携わっている。著書には『「健康」から生活をまもる 最新医学と12の迷信』、訳書にはペトルシュクラバーネク著『健康禍 人間的医学の終焉と強制的健康主義の台頭』(以上、生活の医療社)、ヴィナイヤク・プラサード著『悪いがん治療 誤った政策とエビデンスがどのようにがん患者を痛めつけるか』(晶文社)がある。
「人工甘味料は体に悪い」は盛られすぎている…「アスパルテームの発がん性報告」に現役医師が訴えたいこと

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