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なぜ三重県女児虐待死は防げなかったのか…元児童相談所職員が指摘する「AI導入の盲点」

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genre : ニュース, 社会

乳児院措置後、令和3年に母親の希望によって子どもは家に帰ったが、令和4年2月に保育園から子どもの両ほおと耳にあざがある、との通告があり、児童相談所は家庭訪問により、あざを確認した。この際、児童相談所は一時保護も検討したが、あざが軽微だったことと、母親が指導に従う姿勢がある、との理由で一時保護しなかった。

その後、児童相談所は国のガイドラインにより、3カ月に1度、保育園や親族からの聞き取りは行ったが、子どもはあざが確認された2カ月後の昨年7月から登園しなくなった。児童相談所は長期欠席を知りながら、かつ「要保護児童」としながらも事件の起こった今年5月まで約1年間、家庭訪問等によって子どもと母親に直接会って話を聞くことはしなかった。

三重県の児相はAI導入前に保護の重要性を理解していたはず

こうして児童相談所の関わりの経緯を見るだけで、対応に問題があったことは明らかである。ひとり親家庭、過去に一時保護歴、施設入所歴があり、それ以前に赤ちゃんポストに預けている。加えて家庭復帰後に再度の通告。その後の長期の保育園欠席。AIの評価など必要なく、即、子どもの現認、そして一時保護に踏み切るべきだった。

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では、三重県のAIシステム導入の内容を参照して、児相の対応を見ていきたい。三重県は死亡検証を通し、AIによるリスクアセスメント開始前に、虐待対応ポリシーを変更している。「確信がなく児童を保護せずに死亡」を×、「結果的に保護は必要なかったと後に判明」を○としている。まさに、今回の事件はこのポリシーで禁じられていることをした結果起こったと言える。

保育園を10カ月欠席という情報がAIに入っていれば…

ツール開始にあたっては、「緊急出動を検討する6項目」のうちの1項目として「関係機関の情報で、現在児童の安全を確定させることができない」が挙げられている。子どもは長期間保育園を欠席しているという情報がAIの評価の判断材料に入っていれば、緊急出動、すなわち一時保護のパーセンテージは上がったはずだ。少なくとも、家庭訪問による子どもの安全確認を行うべき、と出ただろう。

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