やはり児相職員が家庭訪問をしてリスクを把握すべき
繰り返しになるが、ひとり親、母からの「育てられない」という相談、一時保護歴、施設入所歴、家庭復帰後の通告、傷・あざを確認、保育園の長期欠席。そして児童相談所は1年近く、子どもの安全確認をしていないし、母親の話も聞いていない。これだけの材料が揃っていたら、虐待を疑うのは当然であり、少なくとも即家庭訪問の実施を児相職員は判断すべきだ。
前述の通り、私はそうしてきたし、管理職もそう判断した。どれだけ忙しくても、担当者が行けない場合は別部署の人間が訪問し、子どもの安全確認をしてきた。傷・あざがあれば、程度によっては写真を送って判断を仰がずとも現場の判断で子どもを保護したし、管理職もそれを良し、としていた。経験豊富な児相職員は、それが児相の仕事だと自負していたし、親の許可を取る必要がないことも当然分かっているので、親が抵抗しても子どもを保護した。
「保護したが必要なかった」と判明するぐらいでいい
そしてまさに三重県のポリシーにあるように、保護した結果、虐待がなかったと判明したら、それは「良かった」と判断すべきことだ。児相は親との信頼関係を築くことも求められるが、それよりも子どもの安全を優先すべきであり、保護したことで親と敵対してしまったらその後、修復に努力するしかない。その時、気をつけなければならないのは、親が子どもに会わせてくれなくなった時の子どもの安全確認の方法である。年齢が低い子どもは自分から助けを求められない。だからこそ、保育園などの関係機関での安全確認が重要であり、そこで安全確認できなくなった時に、虐待を疑わなくてはならないのだ。
さらに、家庭復帰後の通告により、児童相談所が子どもの傷・あざを確認しながらも保護しなかった理由として「母親に指導に従う姿勢があった」とあったが、これは児童相談所の一時保護をしない判断理由としてありがちな考えである。「何かあればこの母親は相談してくるだろう」と考えるから保護しないのだが、この考えは非常に危険だ。もちろん、虐待で児童相談所が関わっている母親で、自分が子どもを虐待してしまうことに悩んでいて、「また子どもを叩いてしまいました」と相談してくる母親もいるし、実際私も「このままでは子どもを殺してしまうかもしれません」という相談を受けたこともあった。