〈人間、なにかが「ある」と、より欲が出るというもの。あんがい「ない」状態というのはサッパリしていていいものです〉
人気脚本家の故・橋田壽賀子は晩年、著書『渡る老後に鬼はなし スッキリ旅立つ10の心得』(朝日新書)の中で、そう説いた。だが、そのお膝元で密かに物欲を肥大させた“鬼女”がいた。
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財団の経理担当が現金約1100万円を着服
7月12日、業務上横領の容疑で警視庁に逮捕されたのは、橋田文化財団(以下、財団)の経理担当だった大堀たまみ容疑者(66)。
「容疑は、2017年4月から20年12月までの間に、12回にわたり現金約1100万円を着服したとするものです」(捜査関係者)
だが、発表された額は氷山の一角に過ぎない――。
財団は国民的ドラマ「おしん」などを手掛けたヒットメーカーの橋田が、放送文化に貢献した人物や番組を顕彰する目的で92年に設立。2000年4月に採用された大堀は、以来20年余にわたり、1人で財団の経理を担当していた。
「財団に来る前は、大手病院で院長秘書をしていたといい、独身だったと聞いている」(財団関係者)
フランスの有名ブランド「ルイ・ヴィトン」全身を固める
普段の勤務態度は、大人しく真面目。財団の理事経験者もこう振り返る。
「年数回の理事会で、交通費を渡してくれる人。あまり印象に残らなかった」
ところが、その裏で大堀は、橋田の存命中から財団マネーを湯水のように使い込み、散財の限りを尽くしていたのである。
「着服した金は、ことごとくブランド品の購入や飲食代に消えていた。横領総額は約1億円に達する」(前出・財団関係者)
銀座に足繁く通い、百貨店の上客になっていた大堀は、逮捕に際してこう供述。
「ブランド店に常連、お得意さん扱いされて、気持ちよくなっていました」
特にお気に入りだったのが、フランスの有名ブランド「ルイ・ヴィトン」。同ブランドで全身を固め、悦に入っていたのだ。
「お洒落な格好をしていたので、実年齢より若く見えました」(足立区にある自宅マンションの住民)
不相応な身なりに違和感を覚えた1人が、橋田の盟友だったTBSプロデューサーの石井ふく子氏だ。