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ラフに、感覚的に、自由に…廣瀬俊朗が語る「アイデア」を生むノートの活用術

『紙と私』

 何かを考えたり、発散したり、まとめたりする時、僕はいつもノートを使っています。文字でも記号でもチャートでも、その場で紙のページに自由に書いていくのが好きなんです。

 分析したい物事があると、何が枠の中にあって、それ以外はどういう要素があるのかなどを思いつくままに書き出し、そのシステムや意味を探っていきます。 自分の中にモヤっとある何かを、ただ書き並べて眺めてみるみたいなこともします。メタ認知といいますかね、それも必要なことだと思っていて。

 文字や図に大小をつけたり矢印でつなげたり、時には英語で書くこともある。思いついたことを瞬発的に紙に出していく感じ。一度書いて消した跡なんかも大事な記録だったりします。

 パソコンだと、きれいに書こうとか、ちゃんと見せたいオーラが出ちゃうんですよ。キー変換のワン作業も僕には要らない。ラフに、感覚的に、感性的に書き出せる紙がやっぱりいいんですね。

 今年の春にラグビー日本代表応援サポーター2023に就任して、「ONE TEAM大作戦」などの応援イベントや、ワールドカップ開催国のフランスでのイベントも企画してきました。世界に向けて「前回の開催国が、またおもろいことやってる」みたいなのがやりたくて。日本に限らずですが、ワールドカップは初戦までは静かで、勝ったら一気に盛り上がる。それを変えたいんです。始まる前から各国のチーム研究やイベントで盛り上がって、終わった後は国内リーグを見に行くくらい根付いたら素晴らしい。そこでファンの皆さんとジョインできるようなプロジェクトを考えてきました。

自身のカフェ『CAFE STAND BLOSSOM ~KAMAKURA~』にて
自身のカフェ『CAFE STAND BLOSSOM ~KAMAKURA~』にて

 開会まで約二週間、選手たちはいろんなものを背負って、最後の準備をしている。それがうまくいってほしいと祈るのみです。僕らは応援しかできないけれど、彼らがラグビーに集中でき、いいパフォーマンスができる環境をいかに整えるか、そういう意味ではファンの皆さんの声援がすごい力になるはずです。

 二〇一九年の三月にHiRAKUという会社を設立しました。ラグビーで培った価値観や主将を務めることで得たノウハウを、人材育成や社会問題の解決に役立てたい。そのためにまず開かれた場を提供し、そこで出会ったお互いが開いてつながり、新しい可能性や世界を拓いていけたらという思いで始動しました。

 宮崎の耕作放棄地で米作りをやったり、甘酒を使ったカフェを開いて波佐見焼のユニバーサルデザインのカップを使ったり。少しずつですが日本の食や技術の応援もいい感じで進んでいます。

 リーダーシップ、俺についてこい的なイメージが強いかもしれませんが、僕はもともと沈思黙考タイプ。そういう立場に置かれたことで、少しずつ成長していった気がします。皆が何かやりたくなる場をどう作っていくか、どうすれば力を出せるか。それを白いノートに描き、仲間と色を塗っていくのが自分のスタイルだと思っています。

ひろせ・としあき●1981年大阪府生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業。2004年東芝ブレイブルーパス入団。高校日本代表や日本代表で主将を務める。代表キャップ数(日本代表として試合に出た数)28。15年ラグビーワールドカップイングランド大会メンバーで歴史的な勝利を収める。翌年ラグビー引退。19年東芝を退社、株式会社HiRAKUを設立。日本テレビ系列news zero木曜パートナーとして出演中。

次回は11月2日号です。

提供:日本製紙連合会

Photo:Shiro Miyake