「粉飾決算は、堀雅晴氏(68)が社長の座についた2003年以降、少なくとも20年は続いてきたとみられます。売り上げを実際の1.5倍まで改竄していた年もあった。粉飾発覚後に債権回収された分を除いても、負債残額は282億円と、これほどひどい粉飾はかつて例がない」(大手信用調査会社職員)
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『なんでそんな話が出るんだ!』粉飾疑惑に逆ギレ
前代未聞の粉飾決算を続け、7月24日に破綻した堀正工業(本社・東京)。創業90年を誇る同社は、ベアリングメーカーのNTNの販売代理店で、直近3年間の年商は60億円を超えていた。
そんな“名門企業”の化けの皮が剥がれたのは、今年5月のこと。経営実態は火の車で、銀行ごとに別々の粉飾した決算書を見せ、全国約50の銀行から融資を受けていたというのだ。
社長の堀氏は1969年に日大法学部を卒業後、NTNの前身企業に入社。2年後、祖父が立ち上げた堀正工業に入社し、2003年に社長を引き継いだ。
「ある銀行担当者が慌てて、堀氏に『粉飾疑惑が出ている』と問い合わせると、堀氏は『なんでそんな話が出るんだ!』と逆ギレするほど取り乱していた」(銀行関係者)
巧妙な手口はA氏が指南していたのではと疑う声も
なぜ銀行の担当者たちが、こぞって堀氏に騙されることになったのか。融資した銀行関係者がキーマンの存在を指摘する。
「実は各行がこぞって融資したのは、東海銀行、合併後のUFJ銀行(現三菱UFJ銀行)を経て、現在は東京海上日動あんしん生命保険で営業マンを務めるA氏の紹介があったから。A氏は約10年間同行に勤めた後、約20年間保険のキャリアを積んできた金融の大ベテランです」
経歴だけではなく銀行時代の名刺も“活用”した。
「銀行に堀社長を紹介する際、銀行時代の名刺を担当者に見せ、『堀さんは昔からの知り合い』と安心させていた。またA氏は、東京での融資拡大をねらう地銀の東京支店に足繁く通っては、『有望な企業がある』などと紹介していたようです。堀正工業による粉飾が巧妙な手口だったため、A氏が指南していたのではと疑う声もあります」(同前)