「弟の葬儀の日、弔問に来た具(英成)〔ぐ・えいせい〕院長と直接話をしたんです。私はただ何が起きたのか知りたかった。ところが、院長からは……」
小誌の取材にそう話すのは、昨年5月17日に自殺した「甲南医療センター」(神戸市)の医師、高島晨伍(しんご)さん(当時26)の実兄で、自らも医師のAさんだ。
◆ ◆ ◆
自殺した日まで100日間休み無く働いていた
地元記者が解説する。
「高島さんの自殺は月200時間超の時間外労働による精神疾患が原因だとして、西宮労働基準監督署が労災認定しています。一方、具院長らは会見で『過重な労働を付加していた認識はない』と主張し、高島さんが自己申告していた残業時間は30時間ほどと明かした。労基が認定した時間外労働には、業務ではない自己のスキルアップを図る『自己研鑽』の時間が含まれていると釈明したのです」
実際はどうだったのか。在りし日の弟について、Aさんが振り返る。
「晨伍は甲南医療センターで研修医となり、3年目だった。2月から専門を目指していた消化器内科に配属され、『凄く忙しくなった』と言っていました」
労基署の調べによれば、高島さんは自殺した日まで100日間休み無く働いていた。
「4月に専攻医となると、顔つきはどんどん暗くなっていきました。母が様子を家まで見に行くと、郵便受けに手紙が溜まり、クーラーはつけっ放し。ゴールデンウィークも休みなく働き続け、5月15日には母の前で『今週締め切りの学会の資料ができない』と突然泣き出して……」(同前)
「弟は残業申請がしにくい病院だと言っていた」と具院長に伝えると…
そして5月17日。高島さんはこの日も出勤していたが、病院の同僚は、首筋の赤い線を目撃している。
「朝の出勤前に晨伍は一度自殺未遂をしたようです。その後、母に『変な気を起こさんようにするから』とメールしていた。でも、返信しても返事がない。心配して母が家に行くと、既に帰宅していた晨伍はクローゼットで首を吊っていました。紺のスクラブ(医療用ウェア)を着ていた。衛生的にも良くないから、病院外では着用しません。それほどまでに追い込まれていたのでしょう」(同前)
4日後の5月21日に行われた葬儀。Aさんは弔問に訪れた具院長と向かい合った。「弟は残業申請がしにくい病院だと言っていた」と伝えると、具院長は、
「いやぁ、私はね、率直に言って、勤怠管理は働いてないところを働いてるっていうことも困りますけども、そういう意味で正確につけてくれと」
と、軽い調子で返答。さらに「朝タクシーに乗って夜タクシーで帰っていたことに関してはどう思いますか?」と尋ねたところ、
「その時は仮眠室で仮眠を取って頂くとか。全体の職員に関わりますから」
などと答えたのだ。