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「愛してる」と言って亡くなった小林麻央さんの最期を作り話だという医師たち

在宅死のリアル──長尾和宏医師インタビュー ♯3

2018/03/13

高校3年生の時に父親が自殺したトラウマ

鳥集 確か、棺桶に入る体験会なんかもありましたね。

長尾 ええ、僕が理事をしている日本ホスピス・在宅ケア研究会のイベントで入棺体験できるコーナーがあって、僕もしょっちゅう棺桶に入ってます。棺桶に入ると、死との距離が一気に縮まる感じがします。そうやって、死を「自分の事」と考えられるようにしておくことが大切なんです。でも、みんな怖いんですよ。お年寄りの人も入らない。入るつもりで来ているのに、入らない(笑)。ですが、それどころか僕、今度7月7日に生前葬もやるんですよ。

鳥集 え?  まだ早くないですか?

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長尾 僕は今年還暦になるんですが、そこまで生きられるとは思ってなかったんです。自分の中では、すごくめでたいことだなと。実は、高校3年生のとき、親父がうつ病で自殺しました。それもあって、自分は長くは生きれない運命にあると思ってきたんです。死に関する本を書くのもその辺に理由があって、要はトラウマ(心の傷)、PTSD(心的外傷後ストレス障害)なんです。

鳥集 そうだったんですか……。

長尾和宏さん ©末永裕樹/文藝春秋

長尾 なぜ自殺がよくないか。それは残された子どもがPTSDになるから。だから、やっぱり死に関してはナーバスになる。でも、それでも60歳になれそうなので、よかったなということで、盛大にやります。しかし、本当に死ぬ時は逆にひっそりと、誰にも分からないように完全消滅するような死に方をしたいなと。

1人でガンジス川に行って死にたい

鳥集 大切な家族に見守られたいという気持ちはないんですか?

長尾 全然ないです。今ここで言っちゃったらバレるけど、たぶんインドに行って、1人でガンジス川に行って、行方不明になってそのまま帰ってこないみたいな。

鳥集 えー、ガンジス川ですか? 僕なんて1人で死ぬなんて考えられないです……。いずれにせよ、いつか自分も死を迎えると自覚できる仕掛けがないと、死について考えたり語り合ったりするのは、なかなか難しいですよね。