9月7日、ジャニーズ事務所は記者会見を開き、故ジャニー喜多川の性加害問題への対応を表明。ジャニー氏の性加害を認めた上で、藤島ジュリー景子社長(57)の社長退任、東山紀之(56)が新社長に就任することを発表した。一方で同会見内では、代表取締役としてジュリー氏は残留、「ジャニーズ」の名称も存続することを明らかにするなど、その経営方針に疑問の声も上がっている。
ジャニー氏の性加害問題については、とりわけ日本では「週刊文春」が率先して報じてきた。世間の流れを変えるきっかけとなった記事を期間限定で特別に無料公開する。(初出:週刊文春 2023年9月7日号 年齢・肩書等は公開当時のまま)
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「泣いて帰りましたね。やっぱ、この夢は捨てなあかんなと」
トップアイドルを夢見た少年は、東京・六本木からの道中、擦り切れたホテルの布スリッパで夜道を歩いていた。
8月29日、ジャニー喜多川氏の性加害問題について、ジャニーズ事務所の委託を受けて調査を行った「再発防止特別チーム」(座長・林眞琴前検事総長)が会見を行った。
「1970年代前半から2010年代半ばまでの長期間に渡り、ジャニーズJr.に対し、広範囲に性加害を繰り返していたことが認められました」(林氏)
関西ジャニーズJr.として活動した長渡(ながと)康二氏(40)は、「再発防止特別チーム」のヒアリングを受けた一人だ。
大阪で生まれ育った長渡氏はSMAPに憧れ、小学校6年生だった1996年に履歴書を送った。約3カ月後、ジャニー氏本人から直接電話があり、大阪市内の朝日放送でのレッスンに呼ばれた。
「急に『じゃ、踊ってみな』と言われてやったのですが、全然何もできなくて。ジャニーさんは『いや、この子、初めてだから』とかばってくれました」
当時の関西ジュニアは、朝日放送のリハーサルルームを借りてレッスンを行っていた。長渡氏も週1回のレッスンに通うようになり、そこにジャニー氏は、毎回のように姿を見せていたという。
ジャニー氏にホテルを指定された
長渡氏がジャニー氏による性加害を初めて受けたのは、レッスンに通い出してから2カ月ほどが経った96年5月のことだった。
大阪市中央体育館で行われるバレーボール女子のアトランタ五輪世界最終予選。
大会サポーターのⅤ6が試合前にライブパフォーマンスを行うため、バックで踊る長渡氏は会場でリハーサルに参加。だが、リハーサルが深夜に及んだため、終電を逃してしまったのだ。
「帰れなかったらここに電話してと、携帯電話の番号が書かれた紙があらかじめ渡されていました。そこに電話したらジャニーさんが出て、『じゃ、タクシーに乗ってここに来な』と、会場からそれほど遠くないホテルを指定されました」