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ドラゴンフルーツは、茎の一部を切って植えれば増やすことができる。上間さんは、大きな実を結ぶ優良な株を選抜して増やしてきた。

「ドラゴンフルーツの生態について、学術的に解明されていないんです。地元の大学の先生に研究してくれませんかと話したら、予算がおりて研究費が付く研究しかできませんと言われて」

その研究者が当時対象としていたのは、沖縄のとある伝統野菜だった。地元で細々と流通するものの、「マーケットがいくらもないようなもの」。ドラゴンフルーツが広まれば、沖縄の少なくない農家の所得が向上すると考える上間さんにとって、その研究は趣味の延長線上にあるように映った。

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「サトウキビだけでは沖縄農業は危ない」

沖縄で行政による予算が最も投じられる作物が、基幹作物であるサトウキビだ。農家の収入に占める国からの交付金の割合が3分の2という高さに達する。

上間さんの目に、その補助金頼みは危うく映る。

「国からの補助金がない、サトウキビの本当の売り上げだけでは、農家は成り立たない。それなのに、サトウキビがなぜいまも沖縄の農業の主力なのか」

こう疑問を呈する。

「サトウキビはおそらく20年以内に消滅するでしょうね。国も財政が苦しくて、補助金を出し続けられないですよ。本来、そんなに金があったら、こういう沖縄に適した作物や、牛などの優位性のあるものにつぎ込んで、研究すればいいのに」

「ドラゴンフルーツは沖縄農業を支える作物」

現実には、沖縄はドラゴンフルーツを盛り上げる機運に乏しい。だからこそ、上間さんは自ら栽培を広めてきたし、今後一層事業を拡張するつもりだ。

ドラゴンフルーツの色の鮮やかさを生かし、加工品を製造したいと考えている。

「あと4、5年したら、六次産業化を図ろうと考えているんですよ。ゼリーやジャム、ワインも考えられるかもしれない。スムージーやジェラートとか」

さらに、観光農業の素材としても持ってこいだと考えている。

ドラゴンフルーツは、同じサボテン科の「月下美人」によく似た大輪の花を咲かせる。成人男性の手のひらよりも大きく開き、月下美人に比べて花弁がより重層的になっている。