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振付師・竹中夏海が明かす「藤井隆とPerfumeのダンスが“すごい”理由」

“テレビっ子”竹中夏海インタビュー #3

てれびのスキマさんが“生粋のテレビっ子”振付師・竹中夏海さんに聞くインタビュー後編。プロの振付師から見た藤井隆のダンス、Perfumeの凄さとは何か? そしてアイドルの振りに「裏設定」が必要な理由とは? (全3回 #1#2よりつづく)

竹中夏海さん

私たちと藤井隆さんの打ち合わせに、代理店はポカーン

―― 竹中さんはアイドルだけでなく、バナナマンの日村勇紀さん扮するヒム子など、お笑い芸人にも振付けしていますよね。

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竹中 日村さんって、設楽さんにネタを書いてもらって、めちゃめちゃ早く覚えて、即笑いをとれるというようなプレーヤーに徹する人。「日村さんのしたいようにしてもらっていいんですけど、どっちがいいですか」って振付けの案を2つ出しても、「あっ、決めちゃってください」みたいな感じなんです。ホントに超スゴい“ザ・プレーヤー”。去年は特に芸人さんを振付ける機会が多かったんです。バカリズムさん、おかずクラブさん、そして、藤井隆さん……。私そのものを構成してるものは、ほぼマシュー(藤井隆)ですから!

―― 『Matthew's Best Hit TV』。

竹中 日村さんが「ザ・プレーヤー」なら、藤井さんは「ザ・プロデューサー」ですね。一緒にお仕事していると、アニメでよくある自分の中のDNAが「ドックン!」ってなるみたいな感じでした。私の中のマシュー遺伝子がきしんで、血が騒ぐ。

―― 藤井さんとはどんなお仕事で一緒だったんですか?

竹中 最初にご一緒させて頂いたのは5年ほど前のMVのお仕事だったんですが、昨年だけで言えばひとつが『しまじろうのわお!』というテレ東系の朝の子ども番組で、エチケットマンという藤井さんのキャラクターの振付けを担当しました。その後、藤井さんが乙葉さんと夫婦共演されている養命酒プレゼンツの体操を一緒に作らせて頂きました。曲を作ってくれたデデマウスさんも、ディレクターさんも、みんな藤井さんと何度もご一緒してるメンバー。なので、「宇宙っぽいんだけど、スペイシーではなくコスモで」「はい、みえました、コスモですね」みたいな、チームだけに通じる感覚の打ち合わせが続くんですよ。現場の広告代理店の方はみんなポカーンとしてました(笑)。

振付:竹中夏海 エチケットマン

振付:竹中夏海 養命酒からだコトコト体操

―― そのまま番組ですよね(笑)。

竹中 だから振付けを作るときって、なるべく空気を読むことを大事にしていて。コーディネートに似てるかもしれませんね。ゼロから服をデザインするというよりは、この服にはどのアクセサリーが似合うか、と選ぶ感覚で。ファッションと同じで一見、組み合わせは無限のように見えて「いやいやこれはさすがにナシだわ」とか自分の中でジャッジしてます。振付けのクローゼットが頭の中にあって、色々ひっぱり出してきて考える。だから相手が求めているものとか、楽曲に合うみたいなものとかと、自分のやりたいことをすり合わせながらやっていく作業なんです。

裏設定をすごく考えるのが好きなんです

―― 個人に対しての振付けと、アイドルグループに対する振付けの仕方、教え方、落とし込み方に違いはあるんですか?

竹中 グループに関していえば、何回も担当したことがある子たちについては、当て書きで振りをつけることはありますね。キャラ設定しやすいし。

―― ダンスにもドラマの脚本みたいな当て書きがあるんですね。

竹中 裏設定をすごく考えるのが好きなんです。振りを作るときの自分のテンションを上げるためにも、設定をつけた方が絶対楽しいですからね。ちょうどこのインタビューの前には、教え子のprediaのレッスンだったんです。『水曜日の嘘』っていう不倫を歌った新曲なんですけど、途中でセリフを言う子が3人いるんですね。1サビ前に言う子、2サビ前に言う子、ラスサビ前に言う子がいる。それでマネージャーと相談して、じゃあ今回は曲の中で3人、主役が変わっていくみたいな設定にしましょうと。それで、3人の「主役」それぞれの子に各局ドラマ枠を設定して、キャラ付けしたんです。

 

―― ドラマの枠?

竹中 振り入れレッスンに入る前にまず「それでは主演女優の方を紹介させていただきます。テレ朝、23時枠主演の青山玲子さんです。よろしくお願いします」「よろしくお願いします、ちょっとなら脱げます」「脱がなくていいです」みたいな茶番をやりながら、それぞれの子に、それっぽい女優モードになってもらう。

―― あはは(笑)。

竹中 「TBS22時枠、ガッキーに追いつき追い越せ、主演の岡村あっきー(明奈)さんです」。「『孤独のグルメ』に続け、テレ東の深夜枠、主演の沢口けいこさんです」っていうやつを。みんないい子なんでノリノリでやってくれます。

―― そのほうがメンバーも曲中の役割がイメージしやすいと。

竹中 自分のテンションを上げるために始めたことですが、同じ振付けでもそこに女の子たちそれぞれの、微妙な差異が生まれればなおいいなと。この裏設定をどこかのタイミングで話せれば、ファンのみなさんも面白がってくれるし……。

―― 振りにもテレビっ子ぶりが遺憾なく発揮されていますね。

竹中 楽しくてしょうがないです。