独自の「理系型」飲食チェーンモデルの確立
同時に、顧客が手書きでオーダー票に書き込む注文方法なども導入して、少人数のパート・バイト人材中心で回る低コスト店舗オペレーションを確立。さらに2003年にスタートし当初苦戦していた海外展開を、オペレーションや価格の見直しにより黒字に転じさせ、これを積極的に推し進めることで為替ヘッジの効いた収益構造を作り上げたのです。
このように初代、二代目の2人の経営者によって、サイゼリヤは他の外食チェーンとは一線を画する、独自のビジネスモデルを確立しました。海外を含めた調達・加工・流通・提供の一貫管理体制の確立、キャンペーンに依存しないメニューの絞り込みと固定化、徹底した工場&セントラルキッチン活用による店舗調理の効率化、さらには海外展開によるヘッジを効かせた戦略――。
これらから感じられるものは、低価格で安定的な品質の製品を大量生産する“飲食の製造業化”とも言えそうな、至って理系的な戦略展開なのです。サイゼリヤのビジネスモデルは理系ど真ん中出身の正垣氏と堀埜氏が築いた、コスト・品質・リスク管理を徹底したデフレに強い「理系型」飲食チェーンモデルなのです。
赤字の国内事業に襲いかかる「さらなる試練」
長らく続いてきたデフレ経済に加え最近時の円安局面でも功を奏しているこの「理系型」飲食チェーンモデルですが、この先の展望はどうなのでしょうか。
現状、実質2%超の物価上昇が1年半以上続く中で、さらにこの先2年、3年と上昇が続くことを日銀は認めています。また、市場では来春にはマイナス金利政策が解除され金利は上昇に転じる見通しと噂されています。そうなれば内外金利差が縮小し、円安傾向は緩やかに是正に向かうでしょう。企業経営は、デフレ経済対応から一転、インフレ経済への対応が求められることになるわけです。
サイゼリヤにとって円安解消傾向への転換は、海外売上にストレートにダメージを与えます。現状の1ドル=150円が120円まで円高傾向に転じるなら、単純計算で何もしないで2割の利益が消失するわけです。