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一方、円高要因は物価押し下げに寄与するものの、政府・日銀が脱デフレをめざす国内経済は、金利上昇、人手不足も含めた賃金上昇傾向や世界情勢の不安によるエネルギーコストの高止まり等でトータルではインフレ傾向に推移することが予想されます。原材料費やパート・アルバイト賃金の上昇は、「値上げをしない」サイゼリヤにはボディブロー的に効き、赤字の国内事業にはさらなる試練となりそうです。

「消費者ニーズの転換」を追いかけきれるのか

さらに、アパレル業界のユニクロと並んで、デフレ経済の申し子的に低価格戦略で成長を遂げてきた同社にとって、インフレ経済への転換による消費マインドの変化もマイナスに働く懸念があります。

低コストを守るためにサイゼリヤはメニュー絞り込みを徹底しており、ここ数年間その総数は約70前後で推移しています。最近時はさらなるコストの抑制目的で、一層のメニュー絞り込みが進んでいます。他のファミレスチェーンの約3分の1から4分の1のメニュー数のまま、インフレ経済への転換局面で所得増加による消費者ニーズの転換を追いかけきれるのか、このあたりも不安要素として浮上してきます。

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昨年8月、正垣氏の後を受け13年間社長として腕を揮い、第二の成長期をけん引してきた堀埜氏が、突如「一身上の都合」で退任しました。詳細な退任理由は不明ですが、すべての役職から完全に外れていることから、何か思うところあってのことなのでしょう。

「経営は『思いつき』と『思い切り』がすべて」と言い切りつつも、理系らしい論理性に裏打ちされた戦略を積み重ねることでサイゼリヤの成長をけん引してきた堀埜氏を、この時期に失った痛手はことのほか大きいかもしれません。

新社長はサイゼリヤ勤務39年のプロパー

23年8月期の好決算は、堀埜氏の過去における戦略的な打ち手が急激な円安傾向という外的要因によって功を奏した結果でもあります。そして、長らく続いたデフレ経済をベースとした時代が終焉(しゅうえん)を迎えようとしている今年度あたりまでが、堀埜氏の過去の打ち手の有効期限であるように思います。