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プライドを捨て、営業先に頭を下げて回った

プライドと現実の狭間で揺れる日々。そんな葛藤の中で、下窪さんは『置かれた場所で咲きなさい』(渡辺和子、幻冬舎文庫)という一冊の本に出合う。そのエッセイを読み終えた時、これまでの価値観が一変した。

「不平不満を言わずに、置かれている場所で根を張って頑張りなさいという内容で、今の自分のことを言っているんだ、と思いました」

そこから始めたことは「プライドを捨てること」だったという。

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「まずはデパートに入らないことには仕事にならないし、勝負できません。そうしたら頭を下げてでも仕事を取るしかありません。従業員も含め、みんなが一生懸命作ったお茶には自信があるので、自信を持って説明することもできる。しつこいと思われたりもしますけど、一生懸命やっていれば誠意は伝わります」

知覧茶本来の甘味と旨味を試飲してもらうために、品種によって茶葉の量やお湯の温度を変えるお茶の淹れ方も研究。三越や伊勢丹、高島屋などの老舗百貨店にも出店依頼の電話をかけ続けた。実直な仕事ぶりが認められ「デパート側から『催事に出店してください』と言われることも増えた」という。今では年間で30週間ほど全国を飛び回り、営業売り上げ5500万円を稼ぐ“トップセールスマン”へと成長を遂げた。

「野球だけではなく、何でも経験したほうがいい」

そんな下窪さんが「永遠のテーマ」と話すのが、全国の生産者がお茶の出来栄えを競う「全国茶品評会」での最高賞獲得だ。下窪勲製茶は昨年、特別賞を受賞したが、まだ1位を獲得したことはない。

「父や兄を含め、従業員の方たちもしっかりとやってくれています。頑張ればいつかは1位が獲れると思っています」

お茶の世界でも“全国制覇”を成し遂げた暁には「どこかのタイミングで野球の指導にも携わってみたい」と話す。投手で甲子園優勝、野手でプロ入り、サラリーマン、そして製茶業の営業担当を通じて培った経験は、野球指導だけでなく、元プロのセカンドキャリアの参考にもなる。