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「働き方改革」審議の舞台裏で、官僚の長時間労働がブラックすぎる

野党議員による質問通告の遅れは、国益を損なっている

2018/03/29

 今国会では「働き方改革」の是非が一大テーマとなっている。過労死に結びつきかねない長時間労働をどう規制するのか。連日、国会論戦の場では野党議員は舌鋒鋭く政府と対峙している。しかし、その舞台裏では、長時間労働を追及する議員たちによって、国会開会中の官僚の労働時間が増大し、文字通りの不眠不休を強いられる“ブラック”な実態があった。

「妻も自分も官僚だが、国会の会期中は『質問通告』の時間が遅いために午前3時、4時にようやく仕事が終わる。翌日は、今度は野党の部会に呼び出されるために朝7時には家を出ていくので、夫婦の会話をする時間がない。特に女性は体調面でのハンデがあるので本当につらい。これでは子育てもできない」(内閣府官僚)

 働き方改革法案を所管する“本丸”の厚生労働省でも、月間残業時間が最長200時間に上ったとの報道(テレビ朝日)があった。

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質問日前日の19時か21時は当たり前

 こうした問題は質問通告の遅れでも同様だ。今回、筆者はいくつかの情報源から直近の野党の質問通告時間リストを入手した。とりわけ立憲民主党と共産党の質問通告の遅れが目立つ。質問日前日の19時や21時は当たり前といった内容である。ある防衛官僚は、「労働者の味方であることを強調する党に限って、残業を強いるかのように仕向けるのはおかしい」と話す。多くの官僚も、異口同音にそう語った。

 2016年に内閣人事局が行った「国会に関する業務の調査・第2回」でも、すべての議員からの質問通告が出揃うのは全省庁平均で20:56(最遅例は24:00)、通告を受けた質問について担当課室の割り振りが確定するのが平均22:36(最遅例は28:50)との結果が出ている。

質問が出揃うまでは、霞が関の全省庁が待機する

 質問通告とは、国会議員が本会議及び委員会で質問をする際に、あらかじめ質問内容を政府側に通達する制度である。官僚は質問通告をもとに統計資料や過去の答弁を調べて、最終的な政府答弁を策定する。質問通告時間が21時であれば、その時間まで霞が関の官僚は帰宅できない。なぜなら、自分に関係する質問があるかどうかは、すべての質問が出揃うまでわからないからだ。

衆議院予算委員会で答弁に立つ安倍首相 ©文藝春秋

「とりわけ予算委員会は全大臣が答弁対象になっているので、議員からの質問が出揃うまでは、全省庁の担当者は全員待機しなければなりません。課長補佐以下の若い係員は全員ですね。まさに子育て世代が残されるわけです。ほぼ確実に森友問題しか聞かれないような情勢でも、とりあえず全員が残るのが慣習化している。当然、若手職員の士気は下がるばかりです。

 経済産業省は、外にいてもスマホでメールを見ることができるシステムになっているので、霞が関に戻れる状態であればどこで待機していても問題ありませんが、大半の役所では自席に張り付いていることが要求される。“労働生産性”とは縁遠い世界です」(経産省官僚)