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父親の余命を仮に10年とした場合、亡くなるまでに現在の貯蓄(家族計1100万円)から600万〜700万円が生活費の赤字で消えていくだろう。介護が発生したら、赤字額はさらに増える計算になる。

父親が「今の家で人生を終えたい」という希望を持つ以上、修繕工事をおこなうのは必須条件となる。とはいえ、修繕をしたのち、父親が存命中に貯蓄が底を突かずに生活を成り立たせるには200万円くらいの支出が限界だろうと考えられた。

雨漏りの修理を行った後、両親が揃っているあいだはできるだけ生活費を抑えながら、自宅で暮らしていく。だが、父親が亡くなった後は、母親の年金だけで暮らすのは無理がある。その頃には、自宅の築年数が60年前後に達しているはずで、経年劣化を考えると自宅で暮らし続けるプランも成り立ちにくい。

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そのため、父親が亡くなった後は自宅を売却して、賃貸住宅に住み替える必要がありそうだ。母親の年金だけでは賄えない生活費については、自宅の売却代金を取り崩しながら補填(ほてん)していくのが現実的だろう。

そこで、売却代金について見積もってみることにした。建物については、売却する際にプラスの評価ではなく、建て壊すために費用を引かれてしまうはずだが、路線価を基に売却見込み価格を予想したところ、家を壊す費用を差し引いて1200万〜1300万円程度は手元に残りそうだと予測ができた。

長男が両親の死後に生きるための最終手段は生活保護

一方、母親の年金だけでは、家賃を含めると月10万円を超える赤字が出てしまいそうなので、売却代金だけで慎二さんの残りの人生にかかる費用をまかなうのは難しそうである。さらに、国民年金保険料の申請免除を受けている慎二さんが、自分の年金だけで暮らしていくのは完全に無理がある。

母親と暮らしているあいだなのか、慎二さんが一人で暮らすようになってからになるのかはわからないが、おそらく母親が存命中に売却資金は底を突くことが予想される。