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紫外線のピークは5月から9月にかけて

2018/05/12

 本格的な夏の到来を前に、講じておきたいのが「紫外線」対策。実は日本では、5月から9月にかけて紫外線の量が最も多くなるのだ。

 紫外線対策というとスキンケアを思い浮かべる人が多いが、忘れてはならないのが「目」の保護。今回のテーマは「サングラス」です。

人知れずピーク期に差しかかっている紫外線

 夏が来れば思い出すのは、はるかな尾瀬と紫外線。しかし、尾瀬は別として、紫外線はすでに我々日本人の体に大量に降り注いでいる。町のラーメン屋さんが冷やし中華を始める前に、人知れずピーク期に差しかかっている紫外線――侮れないぞ。

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 人間にとって紫外線は完全な悪者ではない。人間の体は紫外線を浴びることでビタミンDを生成するので、骨の形成などにおいて重要な役割を担っているのだ。

紫外線は5月からピークを迎える ©iStock.com

 しかし、そんな紫外線も、ある臓器にとっては“ほぼ悪者”として働く。その臓器とは「目」だ。

 紫外線から目を守る最も手っ取り早い方法といえばサングラス。

「サングラスをかけるべきか否か――と眼科医に訊ねたら。まず100%の医者が“かけるべき”と答えるでしょう。サングラスをかけて目に悪いことは一つもない」

太田博仁医師

 群馬県高崎市にある下之城眼科クリニック院長の太田博仁医師は、そう断言する。

 目が紫外線を浴び続けると、様々な障害を引き起こす。

 たとえば「雪目」。雪山やゲレンデなどで長時間にわたって目が紫外線を浴びると、角膜の表面が炎症を起こす。

 溶接をする時に使うお面(溶接面)の覗き穴に、遮光レンズが付いているのを見たことがある人も多いだろう。溶接部が発するアーク光には強力な紫外線が含まれており、光源を裸眼で見てしまうと「電気性眼炎」とよばれる炎症を起こす。雪目はこれと同じ仕組みなのだ。

 もちろん雪面だけでなく、海や川などの水面や、アスファルトからの照り返しなどでも紫外線は目に入ってくる。紫外線の多くなるこの時期は、雪はなくても雪目にはなるのだ。

“加齢黄斑変性”には失明のリスクも

 黒目のすぐ横の白目の部分に茶色や黄色の“シミ”のようなものができる「瞼裂斑炎」や、白目の表面を覆っている結膜の組織が黒目に入り込んでくる「翼状片」という病気も紫外線が影響して起きる病気だ。

 瞼裂斑炎は痛みを感じることは少ないが、違和感を覚えることは多い。翼状片は時に痛みを伴い、放置すると視力低下を招くこともある。いずれも見た目にそれとわかるので、周囲の人が気を遣う。

「これらの病気が紫外線を多く浴びることでハイリスクとなることは明らかですが、他にも、白内障や加齢黄斑変性の発症要因として、紫外線の関与を指摘する報告もあります」と太田医師。

 白内障とは、目のレンズ機能を果たしている水晶体が濁っていく病気。一般的に高齢者に起きやすい病気とされるが、病気そのものは40代から徐々に進んでいく。若い頃から紫外線を多く浴び続けていると進行が早まる危険性が出てくるという。

 一方の加齢黄斑変性は、さらに深刻な病気だ。目で見た映像を光として感じる網膜の中心部にある“黄斑”が損傷することでモノが歪んで見えて、いずれ視野が欠けていく。放置すると失明に至ることがある(日本人の失明原因第4位)。

 白内障は水晶体に人工レンズを入れる手術でクリアな視界を取り戻すことができるが、加齢黄斑変性には劇的な回復が期待できる治療法がない。予防が何より重要で、目を紫外線から守ることの意義は小さくないのだ。