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独裁者というより“道化師”

 そもそも、ベラルーシとはどんな国か。筑波大名誉教授の中村逸郎氏が語る。

「ソ連崩壊後の91年に独立した国で、ソ連時代は“白ロシア”と呼ばれていました。かつてモンゴル帝国の支配を受けなかったため、純白なロシアの伝統を残しているという意味です」

 94年以来、30年にわたって同国に君臨しているのが、「ヨーロッパ最後の独裁者」と呼ばれるルカシェンコ大統領である。

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ルカシェンコ大統領

「独裁者というより“道化師”といった方が近い。民主化運動を抑えようと『公の場で拍手してはいけない』という法律を作ったため、彼が演説しても、広場が静まりかえっていたのは滑稽でした」(同前)

でっち上げには、2つの狙いが

 彼の大きなストレスになっているのが、同盟国ロシアとの関係だという。

「ルカシェンコ氏は、ロシアのプーチン大統領に忠誠を誓う態度を取りつつ、国が取り込まれないよう、のらりくらりとプーチン氏の圧力をかわし続けてきました」(同前)

 元時事通信外信部長で拓殖大客員教授の名越健郎氏は、でっち上げには、2つの狙いがあったと分析する。

「1つ目は、プーチン大統領に“恩”を売るための囚人の確保です。今年8月1日、主に米ロ間で、冷戦後最大の囚人交換が行われましたが、ベラルーシはテロ容疑で死刑判決が出ていたドイツ人男性を釈放してロシア人の囚人解放に協力した。中西さんを次の西側との取引の材料にするという訳です。2つ目は、ルカシェンコ大統領自身の求心力を高めることです。来夏は、同国の大統領選挙があるのでなりふり構っていられないのでしょう」

 海を渡った“侍”の受難の日々は続く。