構成の段階で第14条からの幕開けを考えていたのですが、硬すぎるのではという懸念もあり、制作統括の尾崎裕和さんに確認したところ、良いんじゃないかと採用していただけました。
視聴者の皆さんの中には「『虎に翼』は憲法第14条の物語だよね」と言ってくださる方もいらっしゃいます。女性初の弁護士のひとりであり、女性裁判官となった寅子自身、14条が掲げる「平等」について何度も傷を負いながら突き進んでいくので、主人公とも物語とも密着度が高い存在です。寅子の同級生である“よね”と轟の事務所の壁にも、この条文が書かれていましたね。また、物語にはいろんな人、いろんな差別が出てきますが、そもそも14条はこの国に住む人たちにとって自分の一部であり、切っても切れないものでもあるんですよね。
後半にかけて寅子が「自由」を守るために努力する姿を描いた
ちなみに、私が物語を描いていく中で14条と並んで好きになったのは、憲法第12条です。
「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」
国民は、自分たちが持つ権利と自由を侵害されないように「不断の努力」をしなければいけないという部分を知り、恥ずかしながら私は強く胸を打たれたんですね。憲法が個人の自由と権利を保障することは知っていたけれど、権利を保持するためには私たちが努力をし続けなければならないんだということが強く刺さりました。それで、後半にかけて寅子が不断の努力を続けるという物語をやってきたつもりです。
裁判になるのは実際の判例を基にした事件が多かった
構成では、憲法と実際にあった過去の事件の判例と、現代社会まで地続きになっている問題点を結びつけて描くことを意識しました。実は、当時の時代背景を基に完全にフィクションとして事件を創作するという案もあったのです。でも、細かい部分がぶれてしまったり、矛盾が通じたりするときに、実際の判例を参考にできるほうが良いだろうということになりました。穂高先生(小林薫)のモチーフになった方の著書にある民法のお話やその判例などは私も興味深く読みましたし、チーフ演出の梛川善郎さんも面白いと思う判例をピックアップしてくださっていました。