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二度の仮病

しかし、当時ほかになかった「怪奇菓子」を求める人たちの熱気は冷めなかった。年が明けて2015年2月、100セット限定でバレンタインセットを販売したところ、2日で完売。「そんなに売れるとは思ってなかった」ナカニシさんは、パートと子育て、お菓子作りのスケジュールを見て、「この量、絶対にムリや……」と頭を抱えた。

仕方なく、職場には「インフルエンザに罹った」と連絡し、自宅待機にあてる5日間でバレンタインセットを作りきった。

翌月、今度は100セット限定のホワイトデーセットが、あっという間に完売。そんなに売れるわけがないという過小評価から、スケジュール的に製造不可能という同じ展開を繰り返してしまう。すると今度は「インフルエンザB型に罹った」と嘘をつき、休みになった5日間で発送まで終えた。

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二度も仮病を使ったナカニシさんは、さすがに「こんなことをしてたらあかん……」と反省。「パートにはいつでも戻れるし」と、怪奇菓子一本でやっていくことを決意した。両親からは「大丈夫なの?」と心配されたが、「なんとかなるだろう」と楽観的に考えていた。そう思えたのは、仕送りが続いていたからだ。独立してしばらくは、仕送りが生活の支えになっていたという。

「絶対騙されてる」と怯えた大型コラボ

2015年6月、オンラインショップをオープンさせると、怪奇菓子の人気はじわじわと広がり、売り上げも伸びた。メディアにも取り上げられるようになって知名度も広がり、2016年2月には富士急ハイランドのお化け屋敷「絶凶・戦慄迷宮」と、同9月にはサンシャイン水族館とコラボしている。

やがて、中西怪奇菓子工房の存在が映画業界で知られ始めた。最初にコンタクトしてきたのは、2016年7月に公開された『眼球の夢』というミニシアター系映画の宣伝広報の担当者。「眼球がメインの映画だから、舞台挨拶で目玉を配りたい」と連絡があり、すでに商品化されていた「目玉チョコレート」を用意した。