1ページ目から読む
7/11ページ目

映画業界には、どういう宣伝広報をするのか、したのかを共有する会報があるそうで、そこに「眼球チョコレート」の話も載った。すると、少しずつ映画関係者からのオファーが増えていった。「呪怨」シリーズの清水崇さんが監督を務めた映画『こどもつかい』(2017年6月公開)では、舞台挨拶用のケーキを製作。石田スイさんによる超人気コミックを実写化した映画『東京喰種 トーキョーグール』(2017年7月公開)から話が来た時には、「こんな大作に関われる訳がない! 絶対騙されてる」と怯えたそう。

「小道具の方が、『目玉 食べれる』って検索したら、うちが引っかかったみたいで(笑)、『作ってはるのは青い目玉やけど、日本人風の目玉にできますか』と問い合わせがありました。眼球の虹彩とか瞳孔のグラデーションをリアルに表現しないといけなくて、すごく難しかった。この時は1週間、東京に滞在してひたすら目玉を作りました。最初は目玉ひとつ作るのに、1時間かかったんですよ」

仕送りなしで食べていけるように

こうしてナカニシさんの仕事ぶりと怪奇菓子のクオリティの高さが知れ渡るようになると、企業から続々と声がかかるようになった。

ADVERTISEMENT

2018年は、中西怪奇菓子工房にとって飛躍の年だ。1月にゲームメーカー「カプコン」からのオーダーで、『バイオハザード2』の20周年記念ケーキを制作。7月から10月にかけては、東京ジョイポリスとTVアニメ『東京喰種:re』のコラボレーション企画で、施設内のカフェにて目玉のベリージュレを提供。9月から10月にかけてのハロウィン企画では、3年連続となるサンシャイン水族館のほか、ハウステンボスや星野リゾートともコラボした。

「2018年は、ほんとに忙しかったんですよね。ありがたいことに企業とのコラボはギャラがいいので、このあたりから親の仕送りなしで食べていけるようになりました」

翌年も映画や企業とのコラボが続き、個人向けの売り上げも好調で、いよいよ「目玉御殿」が現実味を帯びてきたところで、コロナ禍が始まった。冒頭に記したように、人と集まる機会が減ったことでオンラインショップの売り上げが激減、映画や企業との案件も軒並み中止され、瞬く間に売り上げが半減する。